水着を半ば強引にずり下ろされて、強制的に自慰させられる。
僕は緑色の背景の撮影台の上に腰を下ろしたまま、手で硬くなっている芯を握りこんだ。

「は…っ、ふ…」

早く終わらせたくて、僕は一心に手を動かす。
上下に扱き上げるように手を動かすと、上げないように必死に押さえていた声が自然と洩れ出した。
周りの男達はそんな僕を、口元に笑みを含みながら見ていた。

「んっ…、んん…」

ぶる、と身体が震え、芯の先端から白濁が飛び出た。
床が汚れないように僕はそれをティッシュに吐き出し、一息ついた。

「…すみません、お待たせしました」

手早く衣服の乱れを直してティッシュを捨て、周りにいるスタッフ達に頭を下げる。
すると、スタッフ達はカメラを見ながらニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。

まさか、と僕がそのカメラに収められたものを確認しようと足を踏み出すと、カメラマンの男が杭を打つように口を開いた。

「カメラ、壊さないで下さいよ?」
「…、…今の、撮ってませんよね?」
「さぁ、なんのことやら」

恐る恐る聞くと、カメラマンはおどけるように返答した。
そのあからさまな態度で、僕は確信した。自慰を撮られたと。

「…そのカメラを確認させて下さい」
「駄目駄目、これは大事な商売道具なんだ」
「…撮りましたね?」

余りにもしつこく食いついたからか、スタッフ達が折れて口々に好き勝手な事を言い出した。

「あのキングオブヒーローのバーナビーが自慰してる写真なんてレアじゃないか」
「一枚で数百ドルは取れますよ」
「裏ルートでしか取引しませんから大丈夫ですよ」

やはり撮られていたことや、しかもそれを売ろうとしていることを知らされる。
僕は動揺で震える声で必死に冷静を装って、言葉を発する。
「…データを消して下さい」
「嫌だね」
「…消して下さい!」

つい頭に血が上り、カメラマンに向かって腕を上げる。
カメラを掴もうとしたその手は周りのスタッフ数人に取り押さえられてしまった。
カメラマンはカメラを自分の背後に、僕から守るように隠した。

「それを、渡して下さい!」
「これを?」
「!」

突然の声に驚いたカメラマンが後ろを振り返ると、そこにはタイミング良く休憩から帰ってきた先輩が立っていた。
先輩はカメラマンからカメラを取り上げ、それを取り返そうと暴れるスタッフの身体を訳もわからないまま華麗にかわしていた。

「先輩、それのデータ、消して下さい!」
「データ?」

未だに取り押さえられた腕は動かせないまま、僕は先輩に向かって指示を出した。
先輩はスタッフ達からの攻撃を避けながら、一瞬顔に困惑の色を浮かべる。が、すぐに僕に確認をとってきた。

「…壊せば良いんだな?」
「……壊して下さい!」

それはやり過ぎじゃないか、だなんて考える暇も無かった。
ガシャン、と派手な音を立てて床にたたき付けられたカメラは、見るも無残な塵と化した。

あぁ、と気の抜けた声を上げるスタッフ達の隙をついて、壊されたカメラから露出したSDチップを取り出す。これで相手の方にデータは無くなった。

「バニー、大丈夫か?何があったんだ?」
「…あ、いえ……、…不意打ちで撮られたものを消して欲しかったんです」
「それだけかよ!」

苦笑して僕の頭をぽんぽんと撫でる先輩の手つきはどこまでも優しくて、つい振り払うのを忘れてしまう。

「壊し屋っていうのも便利ですね」
「人を道具みたいに言うなよ」

惜し気もなく良い顔で笑う先輩に釣られて、僕も思わず笑ってしまった。


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