カシャ、カシャ、と規則正しいシャッター音が聞こえる。
今は、雑誌のグラビアページに載る写真の撮影をされている。これもヒーローとしての仕事のうちだ。
「はい、もうちょっと脚開いてー」
「こうですか?」
「もっともっとー」
カメラマンやその場にいるスタッフに指令され、ひたすら所望されるポーズをとり続ける。
「上目遣いしてくれる?」
「…ちょっと恥ずかしくなってきたんですけど…」
仕事だからと割り切ってやっていることなのだが、それでもこんな大勢の前で開脚し続けるのは少し恥ずかしかった。
先輩がこの場にいなかったのが唯一の救いだ。彼は今、僕より先に撮影を終えたため休憩に外に出ている。もし先輩がここにいたら流石に恥ずかしくて撮影なんて続けられない。
「仕事だよ?出来ないの?」
「や、やります」
どんな内容であれ、これも列記としたヒーローとしての仕事なわけで。逆らえるはずもない。
「M字開脚ね」
言われた通りに脚を開くと、そこにいる大勢のスタッフが僕の脚を凝視する。
嘗め回すような視線に、僕は精一杯周りを視界にいれないようにつとめた。
カメラのシャッター音が響く。
と、唐突にカメラマンの人が声を上げた。
「あれー?バーナビーさん感じちゃってますー?」
何を言うんだ、と咄嗟に口にしようとしたが、言葉が出なかった。
周りを見ないようにしていた視線をカメラに戻すと、なんとカメラは僕の股間を間近で撮影していたのだ。
「な、そんなところ…!」
「ほら見てくださいよコレ」
カメラマンはカメラを構えたまま、周りのスタッフ達に呼びかけた。
何か言いたかったが、いきなりの展開に頭がついていけず、僕はただ目を見開いて呆然としてしまっていた。
スタッフのうち1人が僕の右手をとり、そして僕の股間にそれを導いた。
そこで、ようやく事態を飲み込むことが出来た。
「!!」
「わかります?」
手に触れたのは、硬く勃ちあがったそれだった。
「困りますよ、撮影でこんなにされちゃ」
「…あ…、…ごめんなさ、」
自分でも顔が赤く染まっているのがわかる。思わず目には涙が浮かんだ。
とりあえず撮影は中止か、と思っていたが、スタッフの1人が信じられないことを言った。
「撮影続けますよ」
「…っ、これで、ですか?」
「当たり前でしょう?今日撮影しないとなんですから時間ないんですよ」
それでもこれで撮影するのは絶対に嫌だ。
黒いパーカーの前を閉じて手で押さえ、僕はずっと身を縮めていた。
いつまでたっても撮影を続けようとしない僕に痺れを切らしたのか、スタッフがつかつかと近づいてくる。
「脚開いて下さいよ」
「で、でも、このままは…っ」
「じゃあすぐ抜いて下さい」
再び信じられないことを言われる。
嫌だと言ったが、それなら撮影を続けると言われ、そんなやり取りを暫く続けた。
しかし圧力に耐え兼ねて、数分後には僕は股に手を伸ばしていた。