ピピ、と電子音が鳴る。
「ん、見せてみ」
「はい」
熱を測るために脇に挟んでいた体温計を、バーナビーから受け取る。
液晶に映る数値は38.5。
十分高いが、さっきよりは余程下がっている。
「まだ寝てた方が良いな」
俺がバーナビーの身体に布団を掛けると、彼は口元まで掛かった布団の下で小さく呟いた。
「…寝過ぎて頭が痛いです」
「仕方ねぇだろ、起きてた方が痛くなるぞー?」
「…うー」
いつになく可愛らしい、拗ねたような声を上げたバーナビーの前髪を片手で上げる。
熱を吸収したために乾きだしている冷却シートを額から剥がし、新しいものを付ける。
その冷たさに眉を顰たバーナビーの眉間に指をグリグリと押し付けてみた。
「魘されてたら起こすから」
「…帰らなくて良いんですか?」
「心配だから泊まる」
バーナビーは、まだ何か言いたそうに視線を送ってくる。
何かを言おうと小さく口を開いては、戸惑うようにそれを閉じるバーナビーの頬を、親が子供にするように撫であげた。
「……、…僕が寝たら、どこかに行ったり、しませんか」
甘えるような声で、心配そうに問い掛けられる。
自分が寝たあとで一人にされないかを心配していたらしい。
思わず笑みが零れてしまった。
「お前が治るまで、ずっとここにいてやるよ」
「…本当ですか?」
「あぁ、一人にはしねぇよ」
とろんとした目つきで、まだ心配そうにこっちを見てくるバーナビーの瞼に唇を落とす。
すると意外にも素直におとなしくなった彼は、すぐに寝息をたて始めた。
熱が上がったら、俺が冷ましてやるし、
どこかが痛くなったら、痛みを和らげてやる。
夢にうなされたら、すぐに起こして、そしたら目一杯力強く抱きしめて、安心させてやるよ。
現実は悪夢じゃないと、教えてやるんだ。
「おやすみ、バニー」
まだ熱の下がらないバーナビーの額にキスをして、俺はベッドの脇で彼の眠りを見守った。
数日後にやっと熱が下がったバーナビーにずっと付き添っていた俺が熱を出すことは無く、彼は俺だけでなく他のヒーロー達にもからかわれていた。
もちろん「馬鹿は風邪を引かない、良い例じゃないですか」と言われたが。