うめき声に、意識が覚醒する。
気が付くと、朝早かったはずの時刻はもうすぐ午後に変わろうとしていた。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
バーナビーの手を握ったままの両手は、彼の熱が篭っていて少し汗ばんでいた。
「……う…、…あ…」
「バニー?」
俺の意識が覚醒した原因であろうそのうめき声に、眉が寄る。
「…っ、…んう…」
「バニー、どした?」
悪い夢でも見ているのだろう。
眉は顰られていて、息もかなり荒い。
何かを振り払うように、しきりに首を振っている。
「…あ…嫌だ……嫌…」
「大丈夫か、起きろバニー」
肩を揺すっても、全くうめき声は治まらない。それどころか悪化している。
「う、…あ…あああ…!」
「バニー!」
身体を小刻みに震わせながら涙をポロポロと零し始めたバーナビーの身体を強く揺さぶる。
握った肩の熱さに驚いたが、今はそれどころではない。
「バニー!!」
一際大きい声で彼の愛称を呼ぶと、やっと彼の目が開く。
ようやく目が醒めたか、と安心したのも束の間、バーナビーは再び泣き始めた。
「…嫌だ…嫌だ嫌だ…っ!」
「おい!俺がわかんねーのか!?」
彼を覗き込む俺の肩口を強く押して、バーナビーは必死に俺を遠ざけようとする。
その両手首を捕らえて、もがくバーナビーの動きを少しだけ和らげた。
「…や、やめ……嫌…!」
「バニー、俺だ、安心してくれ」
「……あ…、うう…」
流れる涙を拭うことなくバーナビーは俺を睨み上げる。
その、小動物が敵を威嚇するような、弱々しく儚い表情に、胸が締め付けられた。
「…バニー」
俺は、ベッドに屈み込み、横たわるバーナビーの身体を掻き抱いた。
少し上半身を起こさせて、その熱い身体を抱いたまま背中を撫でる。
「バニー、大丈夫だ」
「………」
ぽんぽんと撫でるようにしていると、徐々にバーナビーの身体の震えは治まっていき、肩の力も抜けて来た。
正面から抱きしめているせいで肩口に吹き掛かるバーナビーの吐息の熱さに、彼の症状の重さを身に感じた。
「……先、輩」
「バニー…、…おはよ」
状況がいまいち掴めていないのか、バーナビーはそのまま暫く黙っていた。
俺も、黙って背中を摩り続ける。
そして、バーナビーは唐突に口を開いた。
「…っ、ごめんなさ、…僕…」
錯乱したことへの謝罪だろうか、バーナビーは俺の肩口に顔を埋めたまま謝ってくる。
その頭を数回梳いてから、俺は彼から身体を離した。
「気にすんな。それより汗掻いてるだろ、着替え持って来る」
「…はい」
熱い身体をベッドに横にさせ、着替えを取りに部屋を出た。