「隣、良いですか?」
「…良いけど。珍しいじゃないこんな所に」

トレーニングの休憩がてら入った、近くのファーストフード店で。
カリーナは一人、目立たない席で昼食にしていた。

突然背後からカリーナに声を掛けてきたバーナビーが、彼女の横の席に座った。

「そうですか?結構来ますよ」
「へぇー…、ハンサムがファーストフードとか、あんまり想像出来なかった」
「変ですか?」
「ううん、意外と似合う」

高級レストランしか行かないのだろうと勝手に付けていたイメージとは違ったが、バーナビーには意外とファーストフードの雰囲気が似合っていた。

どうも、と軽く礼を述べ、バーナビーはふとカリーナの手元を見た。

なんだろうと思う間もなく、彼が口を開く。

「ブルーローズも、ハンバーガーは潰して食べるんですね」

予想外なことを言われ、カリーナは自分の手元を見る。
ハンバーガーは、確かに自分によって潰されていた。

「…これは、癖。今まで気にしてなかった」

今まで気が付かなかった自分の癖に、カリーナはその潰されたハンバーガーをまじまじと観察した。

「それ、ケチャップ垂れません?」
「確かに。言われてみれば危ないわねこれ」

ふふ、とお互い小さく笑った。
包み紙でハンバーガーを半分くるみ、カリーナは食事を再開させる。

「…なんか、新鮮です」
「野菜?」
「あぁ、いえ、そういうのじゃなくて」

変な解釈をするカリーナは、意外と天然なのだろうか。
彼女は、黙ったままバーナビーの話の続きを促した。

「人と、こういう所、来たこと無いので」

あぁ、とカリーナは納得する。
カリーナはバーナビーの事情を知らないが、なんだか人と食事になんて来そうに無いなとは思っていた。

「…あたしもそうだな」
「ブルーローズも?」
「ええ、友達となんかまず遊べないし。家族で来るような所でもないし」

背景は違うが、お互い寂しい思いをしているのはわかった。

「ハンサムが割と歳近いから、嬉しい」
「…、…ありがとうございます?」

なんで疑問形なのよ、と笑われ、バーナビーも釣られて笑う。

「良かったらまた昼食一緒に食べてよ。友達と来れなくても、ハンサムと食べれば寂しくないから」
「僕で良ければ。…その、ハンサムって言うのなんとかなりません?」

ジュースのストローで氷を掻き回しながら、カリーナは首を傾げる。

「ハンサムって嫌?」
「嫌…と言うか……はい…」
「んー」

蓋を開けて氷を直接口に含み、彼女がそれをコリコリとかみ砕く音が小気味良い。
バーナビーもジュースを飲み干し、トレイに置く。

「じゃあ、バーナビーで良い?こっちもブルーローズじゃなくて、カリーナって呼んでよ」
「っ、…はい」
「決まり。じゃあそろそろ戻るわよ」

空のトレイを持って歩く彼女の後ろ姿に、バーナビーは柔らかく微笑んだ。



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