午前の街は出勤中のサラリーマンで溢れかえっている。
人にぶつかりながら、俺は最寄りの薬局に向かっていた。

今日は休みます、と連絡を入れるとあの厭味ったらしい上司は機嫌が悪くなった。
その後でバーナビーの状態を説明し、看病するから休むんだと言うと途端に機嫌を直した上司に、文句を叩き付けたかった。

俺は駄目でバーナビーは良いのか、顔が良くて実力もあるとこれだもんな。
まぁ、俺は日頃の行いもアレだからか…と一人で納得した。


薬局はまだ開店準備中だったが、無理を言って入れてもらう。
品揃えの良い店内で、必要そうなものをどんどんカゴに詰めていく。

どうせ薬など無さそうなあの家に置くのだ。
あっても困らないし、あらゆる種類のものを買っておこう。

メジャーな風邪薬から、頭痛薬、胃薬、腹痛薬、ありとあらゆる種類の薬をカゴに詰める。
なんだか店員さんが訝しげにこちらを見詰めて来たが、気にしないことにする。



その後、近くの食品店で少し食材を買い込み、再び走り出す。

今もバーナビーがあんな荒い息をしながら一人で苦しんでいるのかと思うと、足が自然に早まった。
荷物の重みも忘れて走り、家に着くなり彼の待つ寝室へと駆け込む。

「バニー、大丈夫だったか?」

薄く唇を開け、そこから熱い吐息を吐くバーナビーから返事は無い。
布団を強く握りしめる彼の両手を見ると、なんだか胸が締め付けられるような感覚がした。

「冷たいけど我慢しろよ?」

そう言ってから、俺は薬屋で先程買ってきた冷却シートを彼の額に貼る。
バーナビーは一瞬眉を顰たが、すぐに落ち着いてくれた。

立て続けに腕と肩と頬にも貼ると、少しだけバーナビーの表情が柔らかくなった。
熱が冷やされて、少しは楽になってくれたのだろうか。

バーナビーの熱い手をとり、握り込む。先程まで外にいたせいで冷たい俺の手で、彼の手を冷やした。

「………、ん…」
「バニー?大丈夫か?」
「……んん」

起きているのかまだ寝ているのかわからないバーナビーの手を握る手に、少し力を込める。
心なしか、ぎゅっと握り返してくれたような気がした。

「辛いよな…代わってやりてぇ…」

俺は、握った手はそのままに、ベッドサイドにある椅子に腰掛けて、荒い息遣いと時々唸るような声を出すバーナビーの唇に、自分の唇を押し当てた。

舌は入れていないが、お互い少し口が開いていたので俺の中にバーナビーの熱い息が入って来る。
それは、信じられないくらい熱かった。

ゆっくりと顔を上げて唇を離すと、バーナビーの目がゆるゆると開いた。

「バニー、辛いか?」
「…なんで、ここ…に…」
「ん?あぁ、看病しに来たんだよ。さっきも会話したんだけど覚えてない?」
「……ん、…?」

そのまま再び目を閉じて眠りはじめたバーナビーが、不謹慎だが可愛かった。
今の俺の言葉も通じていないんだろうな、なんて考えながら、俺はバーナビーの手に唇を落とした。


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