ひたすら何かに謝りつづける自分を、どこか遠い所から見ていた。
確かに先輩に対しても謝ってはいたのだが、今ある状況の全てを許して欲しくて、ただただ何かに謝っていた。

自分の身体を割り開いた男達にも許して欲しくて、他人に抱かれた自分を先輩に許して欲しくて。
何もかもから助けて欲しいと、ひたすらに先輩の助けを求める自分を、遠くで嘲笑っていた。



「起きた?」
「―…」

いつの間にか意識を飛ばしてしまっていたらしい。
目を開けると、意識を失う前に見た人とは別人かのように穏やかな顔をした先輩がいた。

何を言えば良いのだろう。
どんな顔をしたら良いのだろう。

きっと先輩は、僕のことを許してはくれない。もう、ずっと"恋人"と名乗ることは出来ないのだ。

不意に、先輩の手が伸びてきた。
殴られる、と思って身構えたが、その手は僕に危害を加えることは一切無く、僕の頭をわしゃわしゃと撫で始めた。

「……」
「…あー…」

僕が何も言えないように、先輩も何を言ったら良いのかわからないのかもしれない。
先輩は、左右に目を泳がせていた。

「あのさ…」
「…、なんですか」
「…ごめんな」

意外な言葉に、僕はハッとして先輩を見た。
先輩は相変わらずばつの悪そうな顔だった。僕が悪いのに。

「…お前、覚えてないかもしれないけどさ、言ったんだよさっき」
「……っ」

言ってしまったのか、あの、先輩にだけは知られてはいけない、その話を。
目の前が暗くなるような錯覚がした。

「…な、にを、言ったんです?」
「接待だって言ってた。それだけしかわかんなかった」

緊張に張り詰めた胸を、少し撫で下ろす。良かった。
それだけなら、悟られはしないだろう。接待の内容だけは。

「断れなかったんだろ?」
「…はい」
「ごめんな、傷付いてたのはバニーの方だったのにな」

ぎゅうっと強く抱きしめられた。
久々に感じたその温もりに、自然と涙が溢れてくる。
それを見られたくなくて、僕も先輩の背中に腕を回した。


「…先輩」
「ん?」
「好きです、先輩」

知ってる、と返されて苦笑する。
そうすると、先輩も釣られて笑う。


この平和は、いつまで続くのだろうか。


[ 6/6 ]

[*prev] [next#]

[目次]
[しおりを挟む]
38


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -