久々の逢瀬だった。
最近はお互い仕事が忙しく、バーナビーなんて俺よりももっと多忙みたいで。
オフィスで仕事している時や、トレーニングルーム等では顔を合わせたが、それ以外では逢うことは無かった。
だからか、今日は珍しくバーナビーが誘って来たのだ。
溜まってるのかな、なんて苦笑した。
昼間見た時は顔色が青く、まるで生気の無い顔をしていたから、なんだか誰かとヤった後なんじゃないかとか思ってしまったが、彼がそんな事するはず無いか、と笑った。
俺の家に来たバーナビーと少し談笑してから、すぐ"そういう"雰囲気になった。
珍しく俺を欲しがるバーナビーをベッドに横たわらせる。
「今日は随分と積極的だな?」
「…先輩が、欲しいんです」
「何かあったのか?」
「…何も、ありません」
何かありそうな顔で、それでもそれを隠そうとするバーナビーに妙な苛立ちを覚えた。
俺に話せないような事なのだろうか。
疑問に思いながら服に手を掛け、いつものように脱がせる。
下半身を残し、上半身を裸にしたところで、俺は見てしまった。
「…なんだよ、コレ…?」
「、…?」
バーナビーの首筋に残る鬱血の痕。それは俺の知らない何者かに付けられた"所有印"だ。
訝しげに首を傾げるバーナビーの首筋を指でなぞると、ハッとしたようにバーナビーが目を見開く。
機敏に両手で首筋を隠したバーナビーに、俺は自分の頭に血が上っていく感覚に陥った。
「…お前、まさか」
「先輩、これは…っ、」
俺は、気が付くと言い訳を探し始めたバーナビーの片頬を打っていた。
そこからの行動は、無意識のようなものだった。
俺に頬を打たれて呆然としているバーナビーの両手を彼の頭の上で縛り上げ、両膝をベッドサイドのに括り付けた。
完全に彼の身動きを封じた後、最後に残った一欠片の慈悲でローションをバーナビーの腹部に大量に零した。
「……っ!」
その冷たさに我に返ったバーナビーが必死でもがくが、俺は行為をやめようとは思わなかった。
浮気、という頭の中の単語に、完全に理性を奪われていた。
今までは"可哀相だから"という理由で使わなかった電動式のローターを取り出し、彼の後孔に押し当てる。
それだけで先端を飲み込み始めた後孔に、少し前に別のモノが入っていたという事実を突き付けられた。
「…先輩、やめ…、…ぁあっ」
やめろと言いつつ嬌声を上げはじめたバーナビーの後孔に、ローターを一気に押し込んだ。
「あ、あぁ…っ、抜い、て…っ」
懇願に答える事なく、俺はローターの電源を入れ、いきなり一番強いレベルへと上げた。
「…ぁぁぁああああっ!!」
「…なぁ、なんで、他の奴とヤったんだよ」
「…あ、…それ、は……っ」
一向に答えようとしないバーナビーの開いた口に、即効性の媚薬を流し込んだ。
「…や…っ、げほっ、」
顔を色々なもので濡らして激しく咳き込みながら、バーナビーの瞳から涙がボロボロとあふれ出す。
それから、大きく肩を上下させたままバーナビーは呟き始めた。
泣きながら「ごめんなさい」と。
「ごめ…、…ごめん、なさ、ごめんなさい……」
その様子に俺は眉を顰めた。
俯き呟き続けるバーナビーの言葉は、明らかに俺に向けられた物では無かったからだ。
よく見るとバーナビーの様子がおかしい。
流し続ける涙がシーツに染みを広げる。身体全体が、快楽から来るものとは別のもので小刻みに震えていた。
いつまで経っても呼吸が落ち着く様子が無く、むしろ息の乱れは大きくなり身体もカタカタと震え始めた。
「…バニー?」
その尋常ではない様子に手を伸ばす。
とりあえずローターを抜いてやると、荒い息の中でバーナビーは「助けて」と小さく呟いた。
「…おい、どうした?」
「……助けて、せん、ぱい」
「何を――」
手を伸ばし、取り敢えず落ち着かせるために頬に触れようとしたら、バーナビーは叫んだ。
「――嫌だ!!」
「…っ」
その剣幕に、手がバーナビーの顔の前で止まってしまった。
バーナビーは、ひたすら何かに謝りながら泣いていた。
「…嫌、嫌だ…っ、先輩、…けて…っ」
「バニー、どうしたんだよ!助けてってなんだよ!」
軽くパニックを起こし始めたバーナビーの身体を縛っていた縄を解き、そのまま崩れ落ちそうになる身体を抱き留める。
「先輩、…先輩…っ」
俺は、泣きながら少しずつ言葉を吐き出すバーナビーの背中を黙って擦り続けた。