そのあとは、最悪だった。
あの後、バーナビーは不特定多数の人間にカメラの前で回され、無理矢理舐めさせられ、犯され、イかされ続けた。
どのくらいの間そうしていたのかはわからないが、バーナビーが失神したのを機に凌辱が終わったあと、バーナビーは暫く自力で立つ事も出来なかった。
凌辱されていたその部屋に備え付けてあるシャワールームで身体を清められ、あとは勝手にしろと言わんばかりの対応をされた。
つまり、部屋に1人残されてしまったのだ。
(…はぁ)
内心で深い溜め息をついて、身嗜みを整える。
服をちゃんと着て、髪を梳かせばもう今まで何をされていたのかなんてわからない。
(…殴ったりされなくて良かった)
殴られでもしていれば、きっと虎徹が目敏く気付いてしまうだろう。
内心、気付かれたら助けてくれるだろうか、なんて考えてしまい、バーナビーはぶんぶんと首を振った。
――気付かれてはいけない。だって、気付かれたら先輩はきっと責任を感じてしまうから。
壁に手をつきながらゆっくりと立ち上がり、バーナビーは部屋の外へと出た。
勝手知ったる社内の廊下を歩き、虎徹がいるであろうオフィスルームへと向かう。
足取りこそフラフラしてはいなかったものの、壁から手を離すことはなかなか出来なかった。
(先輩、先輩…)
バーナビーは一心にオフィスルームへと歩いた。
先程まで行われていた、狂気じみたあの行為を思い出すと、足が震えて来る。
正直に言うと、とても怖かった。
どんな場面でもなかなか味わう事の無い種類の恐怖に、身が引き裂かれそうだった。
だから、虎徹の優しさを、一刻も早くこの身に受けたい。
黙って抱きしめてほしい。
その上で頭を撫でてくれでもしたら、どんなに救われるだろう。
(…先輩、僕を、助けて下さい)
自分が助けを求めては、虎徹を助けることは出来ない。
――耐えろ。
耐えることしか出来ないが、心の中でだけでも、助けを求めてしまおう。
壁から手を離し、少し姿勢を正して歩き出した。
すると。
「バニーちゃん?」
「!」
背後から声が聞こえた。
求めていたあの声が。
「先輩」
「どしたの?顔色やべぇぞ」
「…あ、いえ…ちょっと貧血気味で」
辛うじて立っていられるくらいの腰の怠さに、しゃがみ込みそうになるのを必死で耐える。
虎徹は心底心配そうにバーナビーを見た。
「おいおい、大丈夫か?」
「…大丈夫です…、あの、先輩」
「ん?」
なるべく明るい顔でいようと、バーナビーは無理矢理口角を吊り上げる。
「今日、先輩の家行っても、良いですか?」
「…おー、珍しいな」
家に行くという意味。
そこで夜に何をするかと言うのは、暗黙の了解だった。
普段なら絶対自分から誘って来ることなんか無いバーナビーに誘われ、虎徹は驚きつつも了承した。
「次は雑誌のインタビューだろ?じゃ、また夜に」
「はい」
会って、話して、安堵した。やっとの事で恐怖から少しだけ救われたのだ。
バーナビーは、早く虎徹が欲しかった。
優しく抱いて、そして自分は大丈夫なのだと確認したかった。
「――先輩」
廊下で、自分の腕で自分の身体をぎゅっと抱き込み、そのまま暫くしゃがみ込んだ。