気が付くと、暗闇の中にいた。
意識を取り戻したばかりの頭では、それが自分が目隠しを付けられているからだと気が付くのに時間が掛かった。
「……?」
目を覆う布を取ろうとして、腕が動かない事に気付く。
続いて、脚にも胴にも圧迫感を感じた。
何かで身体を固定されている。しかも、あまり褒められたものではない体勢で。
唯一動く首を動かして周りの状況を知ろうとするも、目隠しをした状態では何も得られなかった。
バーナビーが首を動かした事で、彼の意識が戻った事に気が付いた人物が、バーナビーに声を掛ける。
「お目覚めですか?」
「……?」
誰の声かはわからないし、この声を知らない。
ただ、わざとらしい敬語に少し腹立たしさを覚えた。
「誰、ですか?ここは、どこですか?」
暗闇の中で問い掛けるも、返答は返って来ない。
その声の主が近付いて来る気配だけが、ただ一つわかる事だった。
「…あの」
「飲みなさい」
「……!?」
もう一度状況を聞こうと開いた口に、無機質な冷たいものが宛がわれた。
これはなんだ、と考える間もなく、液状の何かがバーナビーの口に入って来た。
無機質な冷たいビンに入っていた液体の全てをバーナビーの口に含ませ、男はバーナビーの鼻と口を塞いだ。
「――!」
「全部、飲みなさい」
明らかに怪しいそれを吐き出そうにも、顔を上に向かせられた状態で口を塞がれ、吐き出す事が出来ない。
鼻も摘まれているせいで息が出来ないバーナビーは、暫くの攻防の後、それを全部飲み下してしまった。
「―……、けほっ、かは…っ」
液体が胃に入った瞬間、ドクンと身体が大きく脈打った。
――熱い、身体が熱い…
はぁ、はぁ、と荒い息を繰り返すバーナビーに、男の低い声が告げた。
「媚薬だ。即効性のな」
「……!?」
熱い、熱い、熱い。
身体から炎が出てるんじゃないかと思えるくらいの熱に、バーナビーは声も無く悶える。
不意に、ヴヴヴ…と不穏な音が耳に入って来た。
「な、に……」
何の音だ、と聞こうとして、それが叶う事は無かった。
「ぁ…ああぁあぁ…っ!」
首を振り、身をよじって必死に抵抗しようとするが、身体は全く動かない。
突然後孔に挿入された異物に、バーナビーは悲鳴のような声を上げた。
異物に塗られた潤滑油と飲まされた媚薬の効果で、後孔はあまり抵抗無く異物を飲み込んだ。
反射的にキツく締めても、全く構うことなくそれは根本まで埋められた。
「う…あぁ、あぅ…」
無機質な音を立てて振動するそれを飲み込んだバーナビーは、与えられる容赦無い刺激に喘いだ。
身体を一寸たりとも動かせない状態で受け止めるには強すぎる快楽に、ただただ喘ぐ事しか出来ない。
不意に何処かから伸びてきた指に、高ぶり始めたバーナビーのそれを弄られた。
「や、嫌だ…っ、あ、」
それに反応して締め上げた後孔で、ぐちゅぐちゅというあられもない水音が響いた。
「目隠しを外せ」
「はい」
今まで、部屋には自分以外に1人しかいないと思っていたのだが、他にも人がいたらしい。
そんな事を、快楽に溺れる頭で考えていると、突然目に光が差し込んだ。
目隠しを外されたのだ。
すると、バーナビーの目の前には信じられない光景が広がっていた。
「……っ、え…、あ…」
目の前にいる、少ないとは言えない人数の男達。
それから、無数のビデオカメラに、音声を拾うマイク。
「…や、な、何……っ」
「AVの撮影だよ」
信じられない光景を目にしながら、信じたくない言葉を聞いた。
「…嫌、だ…、ぁあ…う…っ、そ、そんな、の…」
「いつものアレだよ。ワイルドタイガーを解雇させたくないなら言うことを聞くんだね」
"いつものアレ"と呼ばれる、アポロンメディアの裏の仕事。
バーナビーはよく、経営費を確保するためにワイルドタイガーを解雇するか、バーナビーが金を稼ぐかの二択に迫られるのだ。
「でも、これは、こんな…っ」
「大丈夫だ、裏のルートだけで流通させるから」
何が大丈夫なのかはわからないが、バーナビーにはそれ以上を問い詰める精神力が残っていなかった。