次々と運ばれてくる色彩豊かな料理。

日本料理と言えば前に虎徹に作ってもらった"味噌汁"なるものしか碌に知らないバーナビーの目には、得体の知れないものばかりが映っていた。
料理を卓上に綺麗に並べ小鍋の下に火を灯した仲居は、ごゆっくりとどうぞ、という言葉を残し静かに消えていった。

「さ、食べようぜ」
「はい」

頂きます、と丁寧に手を合わせ、虎徹は吸い物の入った御椀をぱか、と開けた。その向かいで、バーナビーが不思議な顔をする。

「…開きません」
「ああ、それ固いんだよな!…ほら」

何故か開かない御椀の蓋は、虎徹が蓋を少しずらして空気を中に取り込むと難なく開いた。蒸気がどうこう、と説明されたが、少し理解に苦しんだ。

小船の形をした入れ物には海鮮料理が、火の灯る小鍋には小さな肉が。その他の皿には野菜や果物が沢山乗っている。

「こんなに食べきれる気がしません」
「バニーちゃん食細いもんなー、若い子ってみんなそうなの?」

食べながら話すという高等技術を繰り出しながら、虎徹は料理を胃に詰めていく。

同年代の知り合いがいないバーナビーは、その質問に小さく笑うだけで返した。







「バニーちゃんは酒弱いのか…」

あのあと、食後に運ばれてきた日本酒を2人で飲んでいたのだが、小さい杯で何杯か飲んだだけでバーナビーの目が溶けてきた。
虎徹もそこまで酒に強いわけでは無いが、それでも問題無い量だった。

さらに杯の酒を手に取ったバーナビーを、虎徹が柔らかく制止する。

「もうやめとけよ、お前相当酔ってんぞ?」
「…よってませんー」

少しだけ年相応な喋り方になっているバーナビーに、虎徹は苦笑する。
大人しく杯から手を引いたバーナビーの身体が、酔った時独特のふらふらとした揺れを起こした。

「おいおい大丈夫か?」
「大丈夫、です」

明らかに大丈夫とは言えない彼の身体を、虎徹は横にさせた。
頭を床に付けさせるのには抵抗があったので、胡座の上に頭を置かせ、自分は背凭たれに背を預けた。
所謂、膝枕のような状態だ。

寝心地は保証出来ないものの、大人しく横になるバーナビーの様子に少し安堵する。
乱れる金髪を、虎徹は梳くように撫でていた。

「…ねぇ、先輩」
「ん?」

不意に口を開いたバーナビーが、蕩けた声を紡ぎだす。
虎徹は髪を撫でながら、それに耳を傾けた。

「僕が、人工NEXTだったら、どうします?」
「…お前相当酔ってんぞ」

例えばですよ、とくすくす笑うバーナビーの頭をポンポンと撫でて、虎徹は答える。

「別に、どうもしねぇだろ。バニーはバニーなんだから」

すり、とバーナビーが自分の頬を虎徹の脚に擦り付けるように動いたのは、意識的な動きなのかそうではないのか。
子供をあやしているような気分になって、虎徹は目を細めた。

「じゃあ、もし僕が、貴方の事が好きだと言ったら?」
「……」

質問だろうか、告白だろうか。
虎徹は思い掛けない言葉に、髪を梳く動きを止めた。

暫くの静寂のあと、潔く虎徹は口を開く。

「…どうする、だろうな」

髪を梳く動きは止まったまま、虎徹とバーナビーはお互い何かを考えるように黙り込んだ。

その後、ふふ、と笑ってバーナビーは言った。

「忘れて下さい」
困りますよね、と付け足して。

なんて答えれば良いのかわからないままの虎徹の膝の上で、既にバーナビーは寝息をたてていた。



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