不意に、特に何の原因も無く目が覚めた。
物音がした訳でも、夢を見ていた訳でも無い。こういう事はたまにある。
一度覚醒してしまった頭は直ぐには眠りにつけない。人間の脳というのはそういうものだ。
カーテンの合間から見える月明かりに照らされ、バーナビーはぼんやりとしていた。
今日は虎徹が家に泊まっている。
自分の家の、貸した部屋で寝ているのかと思うと、なんだか相手が自分のすぐ近くにいるような気がして嬉しかった。
(明日も仕事があるし、眠らないと)
そう思って瞼を閉じると、たちまち訪れた暗闇の中でバーナビーは思い出してしまった。
先程まで行われていた情事のことを。
(―……、)
鍛えられている身体、普段から使っている彼の香水の香り、割と器用な指先の感覚、僅かな汗の匂い。
(……寝よう)
慌てて記憶から逃げて瞼をぎゅっと閉じ、一生懸命に眠ろうと努力する。
しかし、一度思い出してしまったものはなかなか頭から離れるものではない。
眠気に代わり、どんどん別のものが頭の中を侵していく。
(……、…仕方ない)
寝付けないのも困るし、何より自分の下半身が疼いてしまったのだ。
頭を落ち着かせる他の方法もわからず、バーナビーは身体を横向きにすると自分の手を足の間に差し入れた。
(……っ、…)
芯を持ちはじめていた自身に直接触れると、身体が勝手に跳ね上がった。
その後ろ、先程まで虎徹に解されていたために柔らかくなっている後孔に指先を差し入れる。
内部を広げ侵入してくる自分の指を、虎徹の熱いそれと重ね合わせた。
「…ふ、…んん…っ」
不意に、自分の指がある一点を掠めた。
「……ぁっ」
必死に声を押し殺しながら、バーナビーは指でその一点を刺激する。身体がビクビクと反応した。
「……あ、…ん…っ」
あと一回したら出る。というところだった。バーナビーの身体は達することなく、小刻みに震えていた。
「…え、っあ……」
「なーに1人で悪いことしてんだよ?」
絶頂は、虎徹がぎゅっとバーナビーのそれの根元を握ったことで留められていた。