視界の端に、相棒と先輩がいた。
人間とは不思議なもので、この前までは全く意識していなかった人物でも、一度意識すると気になって仕方がない。

その人物とは、自分よりも年下で先輩の、イワンだった。

最近、相棒である虎徹と何故か仲が良い。
あの一件があったからだろうか、何かにつけて2人で談笑している。
今だって、ランニングマシンで体力の上昇を図るバーナビーの視界の隅で、2人は何かを話している。

バーナビーが何より気になっているのは、イワンと談笑している時の虎徹の顔だ。

――楽しそう。

自分では何故だかわからないが、とにかくそれが気に食わなかった。

――僕といる時はあんなふうに笑ったりしないのにな。

考えるうちにいつの間にか、じっと見てしまっていたらしい。
バーナビーの視線に気が付いた虎徹が、彼に向かって何気なく手を振る。
その手に応える事無く、バーナビーはランニングを再開させた。







「なんでさっきこっち見てたの?」

バーナビーの使っているランニングマシンの、すぐ横のそれに乗った虎徹が、話し掛ける。
まともにトレーニングする気は更更無い虎徹の乗るランニングマシンの電源は付いていない。

「……見てませんよ」
「あ?いやいや見てただろ?」
「…どっちにしろオジサンには関係ありません」

えー、気になるじゃんー、と間延びした声を無視して、バーナビーは機械を止めるとタオルを片手に休憩室に向かった。

「お、休憩?」
「だからオジサンには関係ありません」
「これから休憩ならさー、どっかで昼飯食わねぇ?」
「……」

思いがけない誘いに、バーナビーは足を止めて振り返る。が、素直になれなかった。

「…折紙先輩と行ったらどうです?」
「……なんでそこでアイツなの?」
「最近仲良いじゃないですか」

まぁ関係ありませんけど、と続けて立ち去ろうとするバーナビーの肩を掴み、虎徹は彼を引き寄せる。
表情を伺いながら会話を続けた。

「何拗ねてんだよー」
「……っ!拗ねてなんかいません!」

パン、と肩に乗せられた虎徹の手を叩き落とすバーナビーの顔に、虎徹は確信する。

「イワンばっか構ってたからだろ?妬くなよー」
「違います!そもそも妬いてません!」

顔を真っ赤にしたバーナビーが反論するが、もう彼が嫉妬して拗ねているのは明らかだった。

「バニー、拗ねんなよ可愛いなー…。俺の相棒はお前だけだぜ?」
「……っ」

ば、と勢いよく虎徹の方に振り向いたバーナビーは、真っ赤な顔のままで、目には涙が浮いてそうな表情で。

「…早く行きましょう!昼食一緒にとるんでしょう!」

それだけを言って、また自分に背を向けさっさと歩き出したバーナビーが可愛くて。
虎徹は頬が緩んだまま、素直じゃない相棒の後を追い掛けた。


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