示し合わせているわけではないのに、トレーニングルームには何故か大抵の場合ヒーロー達がほとんど集まっている。
この日も特に出動要請のないヒーロー達はトレーニングルームで各々トレーニングをしていた。

「寝てるだけじゃないですか」

ランニングマシンで脚力強化のプログラムを熟しているバーナビーが、機械の横にあるベンチに横になっている虎徹に声を掛けた。

「俺もう若くねぇからさー」
「だからこそトレーニングしないと、どんどん衰えていきますよ、おじさん」
「可愛くねぇなー」

虎徹がやっとベンチの上で上半身を起こし、運動するバーナビーの様子を見つめる。
起きたからといって運動をするわけでもない虎徹にバーナビーは溜め息を吐いた。

「バニーちゃん、昼飯行かない?」
「……あなたって人は…」

バーナビーはランニングマシンを止めて、手すりに掛けてあったタオルを首に下げる。

「ちょっとは運動したらどうです?ここ使うなら場所空けますから」
「うん、バニーちゃん何食べたい?」
「僕の話聞いてないでしょう、おじしゃ…っ」

2人の間に気まずい空気が流れる。
バーナビーが噛んだのは、虎徹も気が付いていた。

「あー…、じゃあ中華でも食べに行こうぜ」

ここで噛んだことを指摘しては可哀相だ、と虎徹はさりげなく話をふる。
バーナビーは頬を赤く染め、タオルで口元を押さえながらもこくんと頷いた。

しかし、空気を読まない男が近くにいたのを忘れていた。

「バーナビー君、今噛んだかい?」
「…!スカイハイ…っ」

慌てふためく虎徹に、キースは首を傾げる。状況はまるでわかっていない。

「………っ!!」

羞恥心が声にならないらしいバーナビーは、ついに両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込んでしまった。

「バニー、おじさん聞いてなかった!聞いてなかったから!」
「何がだい?バーナビー君が噛んだのをかい?」
「あああもう!」

訳がわかっていないキースを遠ざけて虎徹はバーナビーをひたすら慰める。
耳まで赤くしたバーナビーが潔く顔を上げるのは、実に数十分後のことだった。




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