「あれ?楓はもう寝ちゃった?」

そう言って虎徹がリビングを見回すと、キッチンから熱いココアの入ったマグカップを2つ運んできた友恵が苦笑する。

「寝ちゃったわよ、明日も学校あるんだから」
「そっか、もう10時かー…」

時計を見ると既に22時を過ぎたところで、小学生の娘は寝て当然の時刻だった。

「虎徹君達だって仕事あるんでしょ?あんまり夜更かししちゃ駄目よ」
「あぁ、でもあとちょっとで決まりそうなんだよ」

虎徹達の座るソファーに向かって置いてある背の低い机の上には、色々と乱雑に文字や絵が殴り書きしてある紙が散らばっている。
相棒との、コンビならではの戦い方を考えろと上司に言われたのが今日の朝。それからずっとここで話し合いながら考えていたのだ。

「そうだ、お布団出して来ないと。今日泊まってくでしょ?バニーちゃん」

先程友恵から受け取ったココアを飲んでいたバーナビーは、その言葉に苦笑しながら答える。

「バニーじゃなくてバーナビーです。…そうですね、お邪魔でなければ」
「ふふ、じゃあ虎徹君のベッドの横に敷くわね。バニーちゃん、ご両親に連絡入れておきなさいよ」

ソファーに座る3人の中ではバーナビーが断トツで若い。何かある度に子供扱いされているような気がして、バーナビーは少し拗ねたような表情を浮かべた。
バーナビーはもう24になるのに、両親だけではなく家政婦のサマンサや、両親の友人のマーベリックにまで過保護を受けていた。そろそろ子供扱いされるのも辛いのだ。

「連絡って…」
「電話貸すから。バニーの親御さん結構心配性だから、電話しないと心配されんぞ?」

虎徹が、階段の方に置いてある電話を指さす。
連絡なら携帯電話でもできるが、相棒の家の電話から掛けたほうがバーナビーの両親は安心するだろう。

「…僕もう子供じゃないんですから…」
「はいはい、大人ならご両親に心配掛けさせないようにしなさいよ」
「はぁ…電話お借りしますね」

上手く丸め込まれた、とバーナビーは溜め息をついて連絡を入れるべく席を立った。

ソファーに残った友恵が、同じく座ったままの虎徹に小さな声で話し掛けた。

「ねぇ虎徹君。楓がね、昼間、"私バーナビーと結婚するー"って言ったのよ」

その言葉に、飲んでいたココアを吹き出しそうになるのを堪えて虎徹が言う。

「いやいや楓は渡さねぇよ」
「将来、バニーちゃんと虎徹君で楓を取り合ったりするのかしら」

それも面白いわね、と笑う友恵につられて、そうかもなと虎徹も笑う。
当たり前で幸せな時間は、ゆっくりと流れていた。



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