1.悪いな、ガキには興味ねえ
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一日の仕事が終わり、虎徹は自宅で缶ビールを片手にパソコンをいじっていた。

時刻は、間もなく23時。
仕事の疲れもあり、今日は早々に寝るか、と考え寝室に入っていった時だった。

ピンポーン

家の中に、間の抜けた呼び鈴が響いた。

こんな時間に誰だ、迷惑だと思いながらも足早に玄関に向かう。

鍵を開け、ゆっくりとドアを開くとそこには仕事の相棒がいた。
相棒と言っても彼は自分の十何歳も歳下で、相棒というよりやはり「後輩」という呼び方がしっくりきた。

「バニーちゃんじゃねぇか、どうしたー?」

突然の来訪者に、顔を覗き込むようにして視線を合わせた。

「…オジサン、」
「ん?」

先輩相手にも関わらずオジサン呼びなのは不躾だとは思うが、その呼び名に少し嬉々とする自分がいた。

「最後に会ったの、もう3日も前だったので…」

あぁ、と虎徹は納得する。
それと同時に、弟のような彼が妙に可愛く思えた。

「寂しかったか?」
「…そ、そんなことは…」

直に聞くと、照れ隠しからか必ず否定の言葉を使う癖も相変わらずだった。
しかし、今日は違った。

「……、…いえ……寂しかったです」

常に無い反応に驚きを隠せず、何を言ったら良いのかがわからなくなってしまった。

「ま、まぁ入れよ。こんな所で…冷えるだろ?」

そう言って、開いているドアを片手で押さえたまま身体をずらし、彼の入るスペースを空ける。
小さな声でお邪魔します、と言ったあと、礼儀正しく靴を脱ぐ。

虎徹は、バーナビーをリビングのソファーに座らせ、何か飲み物を用意しようとキッチンに向かった。

「バニーちゃん、ココアとジュースどっちがいい?」

この言葉がまずかった。
「……子供扱いしないで下さい!」

突然声を荒げたバーナビーに、虎徹は瞠目した。

「バニー……?」

キッチンとリビングは隣接しており、お互いの姿がしっかりと見えるようになっていた。
バーナビーは虎徹を、悲しそうに、それでも鋭く睨んでいた。

「僕はもう大人です…まだあなたの中では子供なんですか…?」
「……」
「先輩、」

虎徹はリビングに戻り、ソファーにちょこんと座るバーナビーの前に座り込み、顔を覗き込んだ。

「…先輩、僕はあなたが好きなんです…相棒だからだとかそういった類ではなく、恋愛対象として、」
「…バニー……」
「…僕なんかに世話焼いてくれて…、…ずっと、ずっと好きでした」

虎徹は、悲痛に顔を歪めたバーナビーの頬を両手で包み込み、優しく宥めるように言い聞かせる。

「…バニー、お前の気持ちは嬉しいが…、でもな、俺は…お前を後輩としか見れない」
「……"子供"だからですか」
「あぁ、俺の中じゃ、お前はまだまだガキなんだ…。悪いが、ガキには興味ない」
「………っ」

今にも泣き出しそうなバーナビーの頬を包み込んだまま、自分の額と彼の額をくっつけた。

「俺達は相棒だろ?それじゃ、駄目なのか?」
「……僕は、嫌です」
「バニー…」
「僕はもう、子供じゃありません…」

不意に、バーナビーが虎徹の着ていたTシャツの首元を掴んで、自分の方に引き寄せた。

「…大人だと、証明して見せます」
「……それって、」

「僕を抱いて下さい、先輩」



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