「なぁ、バニーちゃんはいっつも夜何食べてるわけ?」
それまでオフィスで静かにデスクワークをしていた虎徹が、隣の机に座るバーナビーに声を掛ける。
「バーナビーです。…いきなりなんです?」
「いやー、バニーちゃんって昼飯は軽いものしか食べないじゃん。夜はちゃんと食べてるのかなーと思って」
「……心配されずとも食べてますよ」
バーナビーは素っ気なく答え、再びデスクワークに集中する。
そんな様子のバーナビーを見て、虎徹は頭を掻く。
「バニーちゃん料理出来んの?」
「…まだ話続いてるんですか?簡単なものなら作れますよ」
「簡単なものって?」
返事に詰まったバーナビーが、ジロリと虎徹を見る。
「……何なんですさっきから」
「その様子じゃ、夜飯は店屋物なんじゃねーの?」
「……作らずとも買えば良い話じゃないですか」
やっぱり、と虎徹は溜め息をつく。
朝は食べないと言うバーナビーは、昼食もサンドウィッチだとか、そんな軽いものばかりだ。そんな様子なら、どうせ夜も店屋物なのだろう。そんな予感が的中したようだ。
「それじゃ栄養にならねぇだろー?」
「関係ありません。あと語尾上げるのやめて下さい」
バーナビーは、ずっと自分を見ている虎徹の視線を遮るように、自分のデスクに身体を向け直した。
横から見る彼の、比較的華奢な身体つきと色白い肌が、ろくに栄養を付けていない事を物語っていた。
「関係無くねーだろ?そうだ、今夜お前の家お邪魔して何か作ってやるよ」
「いりません」
即答するバーナビーを余所に、虎徹は話を進める。
「何が良い?俺、大抵何でも作れるぞ」
「いらないと言っているでしょう」
「辛い物が良いとかそういうの無い?」
「何で勝手に話を進めているんです」
「あ、バニーちゃん日本料理は?嫌い?」
「……日本料理?」
今までずっと即答で拒否していたバーナビーのその返事に、虎徹は機敏に反応する。
――食い付いた。あのバニーちゃんが食い付いてる。
しかし、此処で間違えても「食い付いた」等と口を滑らせて喜ぼうものなら、バーナビーは途端に機嫌を損ねてまた「いりません」の一点張りになるだろう。
虎徹は、努めて冷静に反応する。
「そう、日本料理!オジサン一応日本人だから得意なんだよな」
「……日本料理なんて、オジサン作れるんですか?」
「一般的な家庭料理くらいならなんでも作れるぞ」
バーナビーの思わぬ食いつきに、虎徹は内心舞い上がった。
「…なんでも良いです」
「そうか?じゃあ適当に作るわ」
「……はい」
そこは「お願いします」とか「ありがとうございます」とかだろう、というツッコミはせず、デスクワークに戻ったバーナビーの後を追い虎徹もデスクワークに戻った。