「こんなところで寝ていると風邪をひきますよ、オジサン」

男にしては高めの、聞き慣れた声が頭上から降り注ぐ。
少し休憩するだけのはずがいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
虎徹は横たわったまま薄く目を開けた。

「んー、あー…バニーか…」
「バーナビーです!まったく、ヒーローは体調管理がたいせつだというのに」

虎徹は休憩室のソファーから上体を起こし、大きく欠伸をする。
と、そこで異変に気付いた。


男にしては高めの声。
高めの。

バーナビーの声は、決して低くはない。逆に、少し高めかと思うくらいの時もある、が。

―果たして、こんなに高かっただろうか。

違和感に苛まれた虎徹が、辺りを見回して相棒の姿を探す。

「どこを見ているんです。僕はここですよ、オジサン」
「―……バニー…?」

上の方を見回して顔を探していたが、声の方に顔を向けると、そこには娘の楓と同じくらいの小さな少年がいた。
否、小さなバーナビーがいた。
「…っ、どうしたバニー?」
「せつめいすると長くなるのですが、」

本人が言っていた通りとても長い説明をされたが、要するに斎藤さんの実験に付き合わされた結果、身体が小さくなってしまったらしい。

「…というわけです。まぁ数時間もすれば元にもどれるらしいですがその間に事件でもおきたら…、……オジサン?」

虎徹は、相棒余りの可愛さについバーナビーに見入っていた。
いつものように後輩にしては可愛いげの無い態度だったが、それでさえとてつもなく可愛らしいものに見える。

ソファーの上に胡座をかいた虎徹は、目の前の小さな相棒の脇に手を差し込み、そのまま高く持ち上げた。

「わ…っ、…な、なにするんですか」
「これいつまで小せぇままなんだ?」
「知りませんよ、はなして下さい」

虎徹に持ち上げられたまま、バーナビーは上から睨む。
そんな相棒を虎徹は、胡座の中に背中を向けさせるように座らせた。
そのまま後ろから小さな身体を抱きしめた。

「バニーちゃん可愛い」
「ちょ、はなして下さいと言っているでしょう!」

足をバタバタさせて嫌がるバーナビーの頭に鼻を押し付けるようにしてもたれ掛かり、尚も ぎゅ、と抱きしめ続ける。

「懐かしいなー、楓もこの前まではこんな感じだったなー…」
「……」

その言葉を機に、バーナビーが大人しくなる。
そして、もぞ、と徐に動いて、虎徹の腕の中で身体を半回転させ、背中を向けていたバーナビーの身体は虎徹と向かい合わせになった。

「なんだ?サービス精神旺盛だな」
「…そういうんじゃありませんよ」

虎徹の胴体に小さな身体を埋めたバーナビーは、頬を擦り付けるようにして目を瞑った。


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