もう直ぐ日付が変わろうかと言う時間帯。明日も学校だから、と乱菊の家から出で自分の領域である部屋に帰ろうと、踵を返した彼の背中に縋るように手を伸ばした。服の裾を掴んで軽く引き寄せる。前へ進もうとする力と、それを阻む私の力の間で彼は上半身のバランスをゆらり、と崩し立ち止まると同時に此方を振り向いた。その表情には若干の驚きが浮かんでいる。なあに、と艶めかしい声色が私の鼓膜を震わせた。

「今夜は一緒に寝ましょ? 」

「…?」

薄く見開いた青色の瞳が驚愕の表情を更に色濃いものにしていた。誰がどう見たって恋人の甘いお誘いに対して向ける表情ではないと答えるだろう。特には何でもそつなくこなすこの男に至っては。しかし、そんな彼らしさはどうでもいい。今、重要なのは彼に首を縦に振らせること。そうなれば全てが此方のもの。後はどうとでもなる。

「いや?」

「いや…厭ちゃうけど、乱菊にしては甘えたさんやなあ、て」

半ば振り向きかけた姿勢ではなく、完全に此方を向いて彼は未だ裾を掴んだ侭の私の手をその上からやんわりと包んだ。そうだ、普段の私なら決してこんな風に誘いはしない。寧ろギンから誘ってくるのを断っている。

「辛いことでも、あったん?」

そうしてその侭、流れる様に彼の胸へと抱かれた。守られている様な安心感にいつもは流されてしまう。けれど今日はそうはいかない。私が主導権を握らなくては。


「だって、今日は、」


ギンの、誕生日じゃない。


意を決した私の唇から出たその言葉にぽかんと惚けた顔をした彼は予測通りだった。例年通り、と言ってもいい。彼はやはり、自分の誕生日等気にもとめていなかったのだ。

「また、忘れてた」

若干、ふてた様にそう告げれば、彼はああと納得した様な顔に為った。

「今日は九月十日か」

彼がにやりと笑う。

「それで、乱菊がプレゼント、言うわけや」

言うが早いが、彼は私をそうっと抱き上げた。勿論お姫様抱っこで。そのことについては最早言うべきではない。

「そうよ、感謝しなさい」

自信満々に笑う乱菊に、ギンもつられて笑い、乱菊の唇にキスを一つ、落とした。


(はっぴーはっぴーばーすでい!!)




彩様
大変遅く為ってしまってごめんなさい。
一応、ギン乱で誕生日で学パロです。
学パロ、というのを生かしきれていません…というかあれ?なんか関係なくない?状態ですごめんなさい。

もし、こんなの違うぜ、ということでありましたらご連絡ください。
新しいのを書かせていただきます。






















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