現代。
雨が降っている。窓をがんがんと叩きつける程の水滴が硝子を曇らせて、向こう側の景色を歪めていた。じっとりと纏わり付く様な湿気と、寒さ。そういえばテレビではもう梅雨入り宣言をしていた気がする。寝転がっている皮張りのソファが何処となくぺたりとしていて少し気持ち悪い。
「ぎんー」
「んー、何」
ソファにもたれて床に座るギンはこちらを振り返りもせず、本を読んでいる。銀色だけが視界に入る。彼が読んでいるのは何やら難解な本。ちらりと前覗いた時は日本語は愚かアルファベットですら無かった。今日で通算ななにちめ。何がって雨降りの日が。雨は嫌いじゃないけれど、こうも続くて嫌になる。出掛ける際に脚は濡れるし、折角の髪型もぺしゃんこだ。
「雨、長いわね」
「長いなぁ、」
木霊の様に鸚鵡返し。本に夢中で私のことは置いてけぼり。みたいテレビは日曜日の昼過ぎの今はやってない。ショッピングも雨だし行きたくないし本なんか持ってない。別に構って欲しい訳ではないけれど、ギンが高々本にかまけているのが気に喰わない。
(私よりもそんな本が大事か)
ぱらり、と彼の長い指が頁をめくる。その姿さえ、様になっていた。流石私のギン、と思うと同時に悪戯心が湧いて来る。思いたったが吉日。ギンの男にしては細い顎を伸ばした腕で無理矢理上向かせた。ばさり、とギンの手から本が滑り落ちる。変な言語の本はその侭文句も言わずに閉じられた。子供っぽい少しだけの優越感。そして驚くギンに雨の様なキスを降らせる。額に、鼻に、頬に、そして唇に。たっぷり彼の口内を味わって。眼下で驚いた様に呆然と目を見開いたギンを笑ってやった。
(雨降りも中々どうして悪くない)
お待たせしました、まめきち様。
季節に合わせて梅雨のギン乱です。
ギンが読んでいるのはイメージ的にロシア語らへんです。
(ロシア語って確か変なアルファベットみたいなのな筈)
御期待に沿えていると嬉しいのですが…。
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