総毛立つとは、こういう事だとわかった。どんな暴力よりも恐ろしかった。逃げようとするボクの脇をやつは強かに殴った。痛みに呼吸が止まる。

「肋骨にひびが入っているんだ。暴れない方がいい。」

体から力が抜ける。

「いい子だ、ギン。」

そう言いながらも、深い口付けの間、喉に手をかけられたままだった。体中に刻み込まれた刻印と、吐き気のする痴態の記憶と、初めて知る痛みにボクは自分を失いかけていた。そんな時、ウトウトと近く遠くなる意識の底で泣き声を聞いた。

(助けて…)

女の子の声や。どこかで聞いた。ああ、そんなに泣かんでもええ。ボクが

“絶対に助けたるから”

はっと目が覚める。昔の記憶。山で迷子になった女の子を助けた事がある。

(ギンはあたしの天使!)

違う。天使は君や。君の夢でボクは正気を失わずに済んだ。

欺いてやる絶対に逃げてやる

「もう一度聞こう。帳簿はどこにある?」

「…帳簿は…。」


数年後、
ボクは泥棒として腕と名を上げた。

「どういうつもりだ?派手な真似はするなと言っているだろう!」

怒りを隠し切れない様子で藍染が怒鳴り込んで来る。投げつけられた新聞には
“またも怪盗dixから予告状”
の文字が踊る。

「格好ええですやろ。ボク、ルパンに憧れてたんですわ。」

派手に動いて世間の目が集まるようになれば、後ろ暗い所があるこいつはボクを手放さざるを得ない。腕を買うものが増えれば、それはボクの命を守るものも増えるという事だ。

もう、こんな所に用はない

バイバーイ






お茶様からいただきました。











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