例えば、白い雪の上に散々土の上を踏み歩いた足を乗せるような感覚。真っさらな絹布に赤黒い血水を吸わせるような錯覚。

三成の柔らかい手が包帯の上に触れた。戸惑いつつも、ゆっくりと薄い包帯をはぎとっていく。三成は決まり事のように毎日我の元を訪れては、包帯を変えてゆく。見るにも悍ましい躯の爛れを嘘のように美しい三成に見せることですら抵抗があるというのに、その白い指を触れさせることなど、何か許されないことのように思えた。まるで壊れ物でも触るかのようなその手つきに目を細める。この子はかくも優しい子なのだ。文字通り全てを破滅させるまでは止まらないこの愛しい子の手がこうも優しいなどと誰が思うだろうか。

「刑部、痛くはないか、」

常の地の底から響く這うような声色ではなく、耳に心地良い低音。相も変わらず眉間に皴は寄った間々で、にこりともしていないがこれが三成の優しさなのだ。痛覚などもうほぼ無いに等しいというのに、こうして我のことを気遣う。

「刑部?」

返事をせぬ我を訝しみ此方を覗きこもうとして三成が小首を傾げる。死装束のように白い着物の合わせからちら、と雪のような首筋が見えた。ああ、何もかもが我と違い過ぎる。


触れることすら躊躇って
(結局は痛みが増すだけ









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