肩から、滑るように落ちた重い衣がしゃらりと音を立てる。夜陰に晒された肌が冷たい。家康の指が私の肌を這う。誰がこの男を太陽と称した。ぞくりとする程に冷たいその温度が気持ちが悪い。

「わしに、全て任せれば良い」

上辺だけ取り繕った家康の面。本人は気が付いていないのだろうか、それとも気取られはしないと思っているのだろうか。鈍い男ならいざ知らず、乙女なら色恋に疎くとも気が付く様な表情をして、私に愛を囁く。

ざわざわと、遠くで竹林がうごめく音が聞こえる。いっそう冷たい空気が晒された肌を撫ぜる。家康の顔がす、と近づく。睫が触れて仕舞いそうだ。こんな距離許してもいないのに。家康とは何処まで尊大な男なのか。今この手の中に家康の心臓があるとしたら、一思いに握り潰して仕舞いたい。きっと赤い色が煩いくらいに飛び散るんだろう。私の腕が家康の両肩に回る。家康はその腕にそっと手を這わせた。

「私から、離れるな」

私は心にも何処にも無い言葉を吐き出す。月明かりが眩しい。影を求めて家康の胸へ身を預けた。

「解っているさ」

家康も見え透いた嘘を吐く。否、彼は嘘事のつもりは無いのだろうけど。家康の意図せずとして悲壮に歪んだ顔に笑みが浮かんできた。嘘つきで塗り固めたこの愛に家康は何時終わりを告げてくれるだろうか。それは彼が私の嘘に気が付いた時か、それとも私が、

あ、と言う私の掠れた声を残して、茵の上へと縫い止められた。月が陰る。見上げた家康の表情は解らない。早く早くとせかす様に、家康の首に唇を付けた。


怠惰に溺れる
(べつに君じゃ無くてもよかった











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