月明かりが光秀の病的なまでに白い肌を青白く浮かび上がらせる。そっと首に手を這わせた。肌は、思った通り、死人の様に冷たい。

(細い、首。)

彼はこんなにも、細い人だったのか。普段の自信に満ちた態度から、もう少し大きく見えていた。人を小馬鹿にするように、くつくつと鳴る喉が自分の手の下にある。そのことに、言い様の無い恍惚を感じる。今なら殺せる。この、男の煩い口を永遠に黙らす事が出来る。自然、口角が吊り上がる。蘭丸は短く笑った。ゆっくりと手に力を込める。ぎちり、ぎちり、と喉が圧される。皮膚の下で少しづつ塞がれてゆく気管が、見えるようだった。ほら、あと少しで完全に心ノ臓は慟哭をやめるだろう。

瞬間、か、と光秀の瞳が見開かれた。愉悦を多分に含んだ双眸が此方を見ている。ひ、と短い悲鳴をあげて蘭丸は後退った。否、後退ろうとした。臆した蘭丸の腕を光秀がその死人のような温度の手で掴む。まるで、触れられたそこから腕が腐り落ちてしまうような気がした。

「ほら、私を殺して見せてくださいよ」

光秀は蘭丸の手を己の首へと這わせた。先刻まで蘭丸が触れていたところだけが、生暖かい。何が可笑しいのか、自分が殺されかけたと言うのに、くつくつと笑う光秀を睨み付けた。

「黙れ、」

ああ、やはり。彼はあのまま殺しておくべきだったのだ。自分を見上げる光秀の、作り物の様に綺麗な顔に爪をたてる。紅い筋が数本、頬を走った。様見ろ。蘭丸は、それでも笑う光秀を置き去りにして、部屋から逃げ出した。

例えば月明かりの
(指先が腐り落ちるように愛して)









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