ファーストキスは甘い味らしい。
誰がそう言ったのかは知らない。初恋の甘さを例えたのだろうか。それとも、単に雰囲気故なのだろうか。どちらにせよ、僕たちのファーストキスはそんな味はしなかった。無理矢理に重ね合わせた唇は。唯、鉄の、血の味がした。

狂い初めは、きっと。ほんの些細な恋心。戦いで傷ついた君を。これ以上見ていたくなかっただけ。僕以外の人に向けられた笑みに。少し胸が痛くなっただけ。なのに。僕の知らない所で死んでいく君。僕のいない場所で消えていく君。考えただけで怖い。僕のつけた傷以外で血を流す君。僕の剣以外を受け止める君。考えることすらも嫌だ。君は僕だけのモノなのに。僕以外にその瞳も顔も躯も見せて欲しくないのに。どうすれば、君は僕だけのモノになってくれるのかな。だから、僕は。短剣を君に突き刺して。思い切り、押し込んだ。紅が綺麗に君を染める。

「僕は君が大好きなんだ・・っ。 だから、君を殺すのは僕だけなんだよ・・・・・・・。」

右腕を墜として。左腕を折って。右足を千切って。左足を切りつけて。胴を捨てて。君の首を。首だけを、抱きしめた。紅い血が手を染める。ぬるり、と生暖かい感触が。歓喜に躯を振るわせて。優しく、耳元で囁いた。

「愛してたんだよ・・アイク。」

殺してしまうほどに。君のこと好きだった。優しく、優しく。二度目の口付けを死人に捧げた。

「これで、君は僕だけのモノだね。」

王子様は、独り。嗤った。


レモンと鉄分
(それでも僕は幸せだった)




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