少年兵青峰パロ。



つう、と肌を伝う水分が鬱陶しい。額から垂れた水分、血が目に入る前に拭い、持っていた布を包帯代わりに止血する。皮膚が薄く、たいした怪我にもならない癖に溢れる血液だけは多い額の怪我は厄介だ。中々とまらない血が目にでも入った瞬間には、もう終わりだった。生死の境を綱渡りしている様な前線で目を失う事は文字通りに命取り。一瞬の判断が生と死を分ける。

(くそ、)

奥歯をぎ、と噛み締めてきつくグリップを握った。ずしり、と両の手に感じる火器は子供には重たかった。けれど青峰にはそれを理解する術がない。青峰には周りでは子供も大人と同じ様に武器をもち、戦場を駆けるのが普通だった。饐えた臭いが戦場に充満し、大地には血と肉が飛び散り、 吹き抜ける風に砂埃が舞う。目が痛い、喉が渇く、 飛び交う銃声に脳がいかれる。酸素を肺にとりこんでも、かひゅ、と息が溢れるだけでとても呼吸をした気にならなかった。苦しさに上を喘げば立ち上る煙と砂によって灰に濁った空が見える。

(もし生き残れたら、青い空がみてぇな)

そう回想したのは一瞬で、乾いた銃声により意識は直ぐに現実に引き戻された。もう一度握る銃の感覚を確かめる。そうしてそのまま、青峰は半壊の街の中を駆け抜けた。








レールエンド