十二国記パロで麒麟高尾と王さま緑間。
十二国記の知識がなくても支障はないです。




ずっと傍にいる、だなんて気色の悪い永遠を口にする気は更々ない。そもそも永遠なんてものを夢見る程に餓鬼じゃあないし、思い起こしてみてもそんな可愛げのある餓鬼であった記憶もなかった。この指先と指先が触れ合える今さえあればそれで良い。ただそれだけで良い。 例え、明日に彼が狂って終うとしても、この身に降りかかる病で彼の息の根を止める事になってたとしても。彼に殺されるか、彼を殺すか。

「どちらにしろ、贅沢な話だよな」

「なにか、いったか」

己の唇から吐き出された苦笑が、微睡みの淵を彷徨う彼の意識を少しばかり覚醒へと誘った様だった。乱れた褥に横たわる真白の肢体が身じろぎをする。そのまま上体を起こそうとする彼の肩を軽く押し戻した。彼の怪訝そうな表情に優しく笑みを返して、額に貼り付いていた緑の前髪を指先で払って、表れた形の良い額にそっと触れるだけの口付けを落とす。

「何でもねーよ」

「そうか、なら、いい」

「うん」

寝起きだからか普段のお固い口調とは異なり、舌足らずに小さく、そして柔らかく笑む彼は、まるで別人の様だった。今の彼は、無防備な子供の様だ。自惚れでなく、彼は自分に気を許している。それは麒麟と王という立場から来るものであるのかもしれないし、世間一般で言うところの恋人に位置付けられる様な関係性からくるものかもしれなかった。あるいはその両方からかも知れない。

(ああ、ほんと)

様々な感情がない交ぜになった胸中を誤魔化す様に髪の毛をかきあげる。なんか寂しくなっちゃった、と言い訳じみた事を口走って、今度は彼の頬に口付けた。頬からゆっくりと舌を這わせ、唇に。ちゅ、と態とらしく音を立てて唇を離せば、彼の微睡みに溶け掛けかかっていた深緑の双眸が完全なる輝きを放ち此方を睨んでいた。不機嫌さを隠しもせずに眉間に皺を寄せ、一言。美しいその唇が開く。

「寝かせろ、」

一瞬の沈黙。しかしこんなに愛を雨霰とうけた彼の口からでたのは思い掛けない言葉。 意図せず込み上げた笑いがその沈黙を破った。あは、と肩を大袈裟に揺らして笑うと、 彼のその美しい緑の瞳できつく睨み付けられたので、宥める様に再度彼の唇をうばった。






明けのはなし