2

都心の高層マンション、その一室が藍染の住居だった。三重になったセキリュティを解除しないと入れない程の厳重っぷりで、ギンは時折面倒やなぁ、という気持ちにさせられるのだった。ギンは自身の住居もきちんと別所に保持していたが、専ら藍染の部屋で寝食をともにしていた。というより、藍染が、ギンが藍染の居室にいることを望んだからである。

夕食は外で済ませてきた。藍染が書斎にギンを呼ぶ。付けっ放しになっていたテレビでは「解体魔」事件について報道していた。ニュースレポーターが、第三の被害者が発見された場所で、真剣な面持ちで事件の残虐さを語っている。
「全く、とんだ事件を押し付けられたもんだ。世間の関心を一手に集めたこの事件を早々に解決しろ、とはね」
「確かに色々煩うてやり辛いですねぇ。「解体魔」なんて大層な名前まで付けてからに」
「東京だからね、民衆はなんでも騒ぎ立てたがる」
藍染がマホガニー製の書斎机の上に、事件の捜査ファイルを置く。遺体の写真を広げた。ギンは行儀悪く机の淵に腰掛けると、体を捻って藍染の手元を見る。
「一体目と三体目が切り刻まれて酷く損壊している…タトゥーや痣を消したか」
「あるいは整形手術の後かも知れませんね、特に三体目は女性やし。」
「有り得ない話じゃない。明日にでも検視官に確認させよう」
遺体から判明している情報は彼らの性別のみだ。一人目が男性で、二人目三人目が女性。そのうち一人目と三人目の損壊が激しい。対して二人目は四肢と首の欠損を除けばほぼ無傷だった。
「それにしても男女混合とは珍しい。普通はこう言う犯人はタイプ性別にこだわるはずやのに」
ギンがそう言うと藍染は何か思慮する素振りを見せた。
「男性にはDNAが残ってない。彼は性的な対象にはならなかった…一人目は個人的怨恨の可能性があるね。そこが糸口かも知れない」
藍染は何やら考え込んでしまった。こうなった時には下手に話しかけてはいけない。ギンはそっと書斎を後にした。




[ 29/33 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -