如何様に笑ふ/ギン+?

破面とかの誰か。







「朝日が煌煌と輝いて、西欧のやうな部屋を、寝台の上を、照らしておりました。白髪、と云ふよりは雪のやうな、シルバァに近い色の髪を持つた青年が此方を、只見据えて居りました。肩に羽織っただけの、緋色の浴衣から覗く、寝台のシィツにも劣らぬ程の白い肌は、酷く煽情的で在りました。彼は、言ふのです。その薄い、グラスのやうな色の無い唇を楽しそうに歪めて、何がそんなに可笑しいのでせうか、此方を見て笑ふのです。


どうぞお笑いに為つて下さい。僕たちの性交はまるで出来の良いミュウジカルのようでせう。只々愛を知らぬ獣の様に混ざり合ひ交じり合ひ、ウォトカを一息に呷った時のやうに酷く、酩酊した心地へと誘われるのです。藍染は、鳶色の瞳で此方を舐める様に見るのですけれど、僕としては、あの空色に焦がれて仕方が有りません。異人さんのやうな、太陽を閉じ込めた金色が、僕を呼んでいるのです。僕が藍染の向こうに彼女を、見ているのを知つた上で、藍染は僕を抱くのです。それは恋人のやうに優しい時も在りましたし、まるで何かの罰のやうに身体に跡が残る程、酷く扱われた時も在りました。けれども朝がやつて来て、ビロオドのやうな夜が明けますと、彼は慈愛に満ちた目で、僕は見たことは無いのですが、多分聖母とやらと同じと思つて頂ければ結構、そう彼は僕を見ているのです。そんなのつて、余りに阿呆みたいじゃあ、無いですか。


そう言つて青年はまたけらけらと笑いました。私はあまり愉快な気持ちにはならず、寧ろ不快にすら思えたのですが、どうにかはあ、と泡の抜けたシャンペンのやうな言葉を返へすことが出来ました。青年と私の間に、確たる関係性は御座いませんので、聞かぬふりをしても良かつたのですが、青年の飼い主で在る藍染は目下の所、私の雇い主でしたので返事をする他無かつたのです。ああだから、どうか、私にあの宮での事をお聞きに為るのは止して下さいませ。あそこは、悪魔の宮で御座います、決して近づいては為らないのです。」






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