げつよう/華+鳥+サンジ

現パロ

月曜日。教授の会議が長引いて必然的にゼミも遅くなって、解放されたのは夜遅くになってからだった。当然のように駅まで、なんなら彼女の家まで送るよ、危ないからと学部の廊下を歩きながら申し出た。彼女は優しく微笑んで、ありがとう、でも今日はお迎えがくるの。と言った。震えそうになる声を必死に隠して(果たして隠し切れていたかどうか)彼氏?と問えば、小さく小首を傾げた。彼氏じゃあないわ。ふふ、と口元に笑みを浮かべる彼女は実際の年齢よりも遥かに落ち着いて見える。ミステリアスな大人のお姉さんだった。今だってほら、彼氏じゃないと言うのならなんでそんな思わせ振りな態度を取るのだろう。友達、親、親戚、なんでも言いようはあるだろうに。夏の最中の生温い風が俺と彼女の間を吹き抜ける。櫛通りの良さそうな艶やかな黒髪が乱れるのを片手で抑えていた彼女は、正門の向こうに目当てのお迎えを見つけたようだった。目元が一層優しく、そうして明るく輝いている。正門の前には真っ赤なランボルギーニが止まっていた。あら、待たせちゃってたみたい。ベージュの口紅を塗った唇は夜の街灯の下でもやっぱり綺麗だ。彼女が早足で正門に向かうのに着いて行きながらそんな事を考えた。車の持主も彼女に気が付いたのか、ドアを開けて降りて来た。先ず目を引いたのは(自分も他人の事をどうこう言えた義理ではないが)派手な金髪、緩く弧を描く口元。側に寄って始めて気がついたが、かなり背が高い。そうして極めつけは前を肌けた派手な柄のシャツと、ドピンクのファーコート。知的で清楚でミステリアスな彼女に全く釣り合ってない。と言うかそもそも男は堅気の人間には見えなかった。何とも形容し難い巫山戯たファッションセンス、普通の人間ならまずしない。しかし、しかし悔しい事に長身、服の胸元から覗く鍛え上げられた筋肉、短く刈り込まれた柔らかな金髪、夜目にも明るい南国の空の様なアイスブルーの瞳、男の体を形成する全てによってその奇抜な装いも様になっているのだった。男はその長い足ですらりと俺たちの前に立つと俺の方をちらり、と見て、彼氏?と問う。違うわ、と彼女は微笑みゼミの後輩よ、と言った。ですよねー彼女の彼氏なんかになれてませんよまだーって思う。けれど男が彼氏かと問うたってことは!!そう、男は彼女の恋人なんかじゃなかったということで。良かったと胸中でそっと息をつく。彼女にもし、もしお付き合いしている男性がいるというだけでどうにかなってしまいそうなのに、その上こんな派手な、カタギで無いような男だったと思うともうダメだった。そうか、俺はドンキホーテ・ドフラミンゴだ、こいつを宜しくたのむぜ、男はそういい、慣れた仕草で彼女の為にドアを開くと助手席を埋めてそのまま車で走り去った。未だ混乱の渦中にある俺を残して。

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