ロサンゼルスを見下ろすパラス・ホテル。天をつかんばかりの摩天楼が聳え立つ。このホテルはその中でも高い格式を備えたホテルだった。凝った彫刻がほどこされた天井や柱。夜景がみれるようにと硝子が全面に張り巡らされた広いホール。そのホールではアドラー号の処女航海を祝したディナーパーティーが行われていた。様々な国籍の客が談笑しながら食事を楽しんでいる。

「これ美味しいッス!!武内さんこられなくて、ホント残念」

そのテーブルの一つで男女が食事をしていた。女性の方は輝くばかりの金髪に同じ色をした瞳。シャンパンゴールドのカクテルドレスは背が際どく開いていて、ともすれば下品になりかねない程だったが女性はそれすらも魅力にしている。

「仕様がないでしょう、黄瀬さん。ボスは急に仕事が入られたんですから」

黒髪の男性が美女ー黄瀬の言葉をうけて答えた。タキシードを着崩すことなく着た様からは真面目な印象を受ける。

「あ、笠松さん。この旅の間は、敬語止めてくださいって言ったッス」
「黄瀬さんにそんな口をきくわけには、」

困惑する笠松に黄瀬はフォークでラムを突き刺しながら言う。笠松は本来ならこの席につく予定も権利も無かった。唯海常のボスである武内とその愛人黄瀬のボディーガードとして、アドラー号の航海についていく予定だったのだ。ところが今朝になってシマで大きな動きがあり武内が引き返さなくてはならなくなり、残った黄瀬に折角だから一人で楽しんでこいとボディーガードに笠松をおいていったのだ。

「俺を放って仕事に行った武内さんが悪いんスよ。だから精々この旅の間は笠松さんと楽しむ事にするッス」

ぷんぷんと頬を膨らまして、子供の様な振る舞いをする黄瀬に胸中でため息をつく。ボスの愛人と二人旅だなんて、気の休まる筈がない。笠松は前途多難が予測される明日からの14日間の船旅を思ってうんざりとした。




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