戯言パロ 今吉と青峰

青峰「死線の蒼」
今吉「街」「愚神礼賛」



青峰は、数世代前に存在していたという天然ものの<サヴァン>を人の手で造り出そうとした結果の産物だ。その実験の成果は存分に発揮され、青峰は「青色症候群」と呼ばれる迄に成長した。しかし、彼は其所ではとまらず、とまれず、その先へと突っ走った。結果、青峰の思考は人類の誰もが到達出来ない場所へと至った。成功し過ぎたが故の失敗作。レベルを数段落として、玖渚機関への協力を果たしてはいるが、その頭脳はもて余される事となり、その余白で余暇で、青峰は普通の中学生としてバスケに勤しんでいた。そして、普通であったはずのバスケに於いて普通でない結果を叩き出して仕舞った青峰は、グレた。関係者各位にしてみれば「グレた」なんて可愛らしいものではなかったかも知れないが。彼は自分を慕うものを集めて<仲間>をつくり、あらゆるものを破壊しつくした。完全に無比なる正体不明。何人いるのか誰がいるのか、一切が謎に包まれていた彼等<仲間>。期間にして僅か数年、その間に彼等は電脳世界の中で暴れに暴れた。その凄まじさといったら、一種の創世記だった。よくも悪くも既存のネットワーク技術が全て破壊され、格段上なものに成長した。無理矢理引き伸ばされた。そうして彼等<仲間>は表れた時と同様に、突然に掻き消えた。まるで最初からなにもなかったかの様に、結果だけを置いて、一切の痕跡も残さず消えてしまった。

「暴君、」
「何だよ、今吉サン」
「いや、えらい楽しそうやなあ、と」

そんな風に、するりと消えてしまった<仲間>。空前絶後な<仲間>のリーダーがこの、不機嫌そうな十六歳の少年であると言って、信じる人がいるだろうか。かくいう今吉も、<仲間>として彼に、青峰にあっていなければ何かの冗談だと荼毘に伏しただろう。<仲間>が活躍していたのは今吉が高校一年の時から約三年間。WCでの敗北を機に青峰は<仲間>の活動をやめた。とはいっても、<仲間>総勢八名、皆が皆奇遇な事に桐皇バスケ部であったことから、活動をやめても交流事態が絶えたわけではない。今吉も暇さえあれば青峰の居城であるマンションに乗り込んでせっせと、「暴君」青峰の世話を焼いていた。

「よくわかったな、誉めてやるぜ、今吉サン。この間な、誠凛の死体の始末頼んだだろう?あれテツじゃなかったみたいなんだよな、誰だと思う、今吉サン」
「さあ、皆目見当もつかんわ…」
「んだよ、つまんねーな。この間赤司が此方来てた日に会ったんだけどな、火神だったぜ」
「へえ」
「新しい零崎だとさ、今吉サン」

そんな事知っていた。なんたって今吉は「街」である前に零崎三天王「愚神礼賛」なのだ。ニヤニヤとチェシャ猫の様に唇の端で笑う暴君は、きっと知っているのだろう。今吉が、青峰に対して最も隠したい秘密。今吉の本心を知ってか知らずか、青峰は「知ってたぜ」と口に乗せることはしない。婉曲に遠回りに言外に、含んでくるだけだ。

「殺し名の一人や二人や十人や百人、ワシ等には、何も関係ない事や、暴君」






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