戯言パロ 青峰と赤司と黒子と火神

青峰「死線の蒼」
赤司「結晶皇帝」
火神:零崎
黒子:「自殺志願」

「不敗というのは疲れるんだよね、大輝。たまには負けてみたいものだね」
「かは、あの泥を啜るよりも生臭く、血を吐くよりも生々しく、地を這うような生殺しの、そんな敗北が味わいたいってんなら、いいぜ、いいぜ。今から俺が上からも下からも溢れる程に注いでやるよ、敗北を」

殺伐とそう言って、青色症候群と生涯不敗は平日真昼のマンションで肩を並べていた。二人の前のばかでかいテレビには、どこかで見たようなレースゲームが映しだされ、二人の手にはコントローラーが握られている。

「あ、ちょ、てめ、なんでそんなにキラーばっかきてんだよ、チートかよ!!」
「大輝こそさっきから、バナナばかりじゃないか、好きなのかい」

他のUCPを周回で引き離して、一位二位を僅差で争う亀のラスボスと赤い配管工は、わずかばかり配管工のほうが先にゴールへと到達した。

「で、何しに態々京都から出てきてんだよ」
「寂しくなっただけさ、単にね。後テツヤが最近家族が増えたって喜んでいたから、ソイツの顔を見にきただけさ」
「へー、そいつは御苦労なことで」
「序でにその零崎が女なら僕の子を生んで貰おうかと思ってね。その点で言えば趣味かも知れない」
「相変わらず悪い趣味だ」

生涯不敗、彼に親しいものだけが知っているーといっても彼に隠している気はないのだけれどー彼の、一種傍迷惑と言える趣味は子作りだ。何れは殺し名七名、呪い名六名、全ての子供をコレクションすると宣った。

「止めてください赤司君、何度言ったらわかるんですか、家族はあげませんよ。それに残念なのか喜ばしいのか、少なくとも赤司君にとっては残念なことに、新しい僕の家族は男ですよ。190pの筋肉質な弟です」
「おや、テツヤ早かったね」

ソファに腰かけた侭の二人がぐるり、と背後を振り向けば黒子テツヤがいた。今は金曜の放課後である。学校帰りなのか、彼は制服を着たままであった。そうして、その隣には同じく黒い制服を着崩した火神大我が憮然とした面持ちで立っている。

「おい、テツ。なんでコイツを俺の家に勝手にあげてんだよ、場合に依っちゃあ、幾らテツでもお仕置きすんぞ、コラ」
「なんですか、僕は赤司君が興味をもった様なので連れてきてあげただけなのに」

赤司が視線を火神へと遣る。つられる様に青峰も視線を動かした。

「まさか、彼が新しい零崎かい?」
「おい、黒子。なんで青峰と赤司がいるんだよ」

声を荒げる火神を無視して、赤司は火神を上から下へまじまじと見詰める。まるで、新しい生き物を観察する様に。手を足を腹を見つめる。気持ちの良い視線ではなかった。

「へえ。子供は期待できないけれど、中々に良い人材だねテツヤ」

はん、と軽く笑われた。火神の中には未だ、殺人衝動が燻っている。先日覚醒したばかりのその血は、今にも吹き出しそうに器の縁を揺れていた。それが、赤司の嘲笑によって溢れる。満杯の器に石を投じた様に。殺意が零れ落ちた。ぽん、と柔らかく手を置かれる。

「落ち着いてください、火神君。君では赤司君に勝てませんから」

黒子が火神の肩に手をかけていた。身長差のせいで、背伸びをする子の様な有り様であったが、火神はその置かれた手によって抑えられた。溢れ出た殺意を、止められた。

「火神君、僕達は殺し合いをしに来たんじゃないんですよ。お礼に来たんです」
「お礼?なんでそんなもん、コイツらにしなきゃなんねーんだよ」
「忘れたんですか、火神君。君が零崎に為った時の死体を、片付けてくれたのは青峰君なんですよ」
「正確には<仲間>が片付けてくれたんだけどな」

火神はつい先日の事を思い出す。黒子が「片付けを頼む」と言ったのは青峰であったのか。<仲間>、また知らない言葉が飛び出してきた。「表の世界」以外を知ったばかりの火神にはわからない言葉ばかりが飛び交う。それは黒子もよく言っていたが一般人が殺し名と為る零崎の弊害みたいなもの、らしい。性質を受け入れ、常識を廃し、資質を持っていても尚、経験には及ばない。

「「表の世界」の彼等は存分に存じているとは思いますが、「死線の蒼」青峰君と「生涯不敗」赤司君です。彼等常識はずれに強いので仲良くしておいて損はないですよ」



あれから、赤司と青峰に巻き込まれてマリ●カートをするはめになった。しかも徹夜で。順位は赤司がぶっちぎりの一位。「生涯不敗」はこんな場面にも発揮されるらしい。開放されたのは既に日がのぼりきった、土曜日の真昼だった。





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