黒子と青峰
貴方の輝きは痛いんです。とふと彼に溢した。別離が決定付けられる前の、けれど綻びが見え始めた夏の終わりの事だった。深い海を模した彼の瞳が、瞬く。二度開かれた彼の瞳に映る自らの姿は酷く矮小だった。
「そうか、」
彼は優しく笑う。どうして、彼が傷付いた顔をしている。そう、言いかけた言葉は喉に骨の様に引っ掛かってでてこない。中天に昇り詰めた太陽に軽い目眩を感じた。足元の二人の影は、先の見えない程に暗い。喚き散らす蝉の声が煩かった。
「青峰君は、ずるいです」
手元のバニラシェイクをず、と啜る。真夏の気温にすっかり温くなってしまっていた。彼の力強い腕が伸ばされて、無言の侭に僕の頭を乱暴に撫でる。
「だから痛いですって」
溢した僕の言葉は蝉にまぎれ、コンクリートに消えていった。
[ 21/70 ][*prev] [next#]
[mokuji]