黒子と青峰

貴方の輝きは痛いんです。とふと彼に溢した。別離が決定付けられる前の、けれど綻びが見え始めた夏の終わりの事だった。深い海を模した彼の瞳が、瞬く。二度開かれた彼の瞳に映る自らの姿は酷く矮小だった。

「そうか、」

彼は優しく笑う。どうして、彼が傷付いた顔をしている。そう、言いかけた言葉は喉に骨の様に引っ掛かってでてこない。中天に昇り詰めた太陽に軽い目眩を感じた。足元の二人の影は、先の見えない程に暗い。喚き散らす蝉の声が煩かった。

「青峰君は、ずるいです」

手元のバニラシェイクをず、と啜る。真夏の気温にすっかり温くなってしまっていた。彼の力強い腕が伸ばされて、無言の侭に僕の頭を乱暴に撫でる。

「だから痛いですって」

溢した僕の言葉は蝉にまぎれ、コンクリートに消えていった。


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