「せんせーい」
「んー?どしたの沖田く……、!?」

ん、と可愛らしい声と共にずいっと差し出されたのはこれまた可愛らしい唇に挟まれた一本のポッキーだった。蘇芳色のまんまるの大きな瞳には固まった表情のこのクラスの担任の坂田が映っていた。

「お、お、沖田くん!??え、何ソレ!?先生に食べろって言ってんの!?え!?」

テンパっている坂田に沖田は一旦ポッキーを唇から離して手に取り、そのポッキーをぴっと坂田に向けた。

「先生知らないんですかぃ?今日はポッキーの日なんですぜ」
「いや、知ってるけど!知ってるけども!」
「ポッキーの日なんだから、やっぱり食べとかなきゃだめでしょう。仕方ないんでせんせーにもあげやす。土方さんはポッキーは嫌いみたいなんでね」

皮肉ったらしく声の音量を上げて沖田が言うと少し離れた席に座っていた土方がじろりと沖田を睨んだ。誰もが怖がるであろうその眼つきに沖田は気にも止めずにもう一度ポッキーを唇に含んで、坂田に差し出した。

「はい、せんせ」
「いやーさすが!沖田くんは優しいなぁ。じゃあ遠慮なく…」

険悪なムードの2人をみて、坂田は上機嫌に言った。いつもはうざったいくらいにいちゃついてるこのバカップルがいまは喧嘩の真っ最中。坂田にとっては沖田からこんなことをされるなんて、滅多にないことでにやける顔を隠しきれないまま、ちゃっかりと沖田の頭の後ろに手をまわし、その差し出されたポッキーに食らいつこうとした。

ぽきっという音とガチッと坂田の上と下の歯がぶつかる音が同時に鳴った。

「てんめぇ!!なにしやがんだ!折角沖田くんがくれるって言ってくれたのに!」
「うるせぇ変態教師が!!」

床には無残に短くなったポッキーが転がっていた。坂田の口がポッキーに触れる寸前に土方がポッキーを折ったのだった。

「ほんとでさぁ。邪魔しないでくだせェ。あんたはポッキーの日なんかばかみたいでくだらないって思ってるんだから関係ないでしょう。口出ししてくんじゃねえやい」

自分の唇にある残ったポッキーを坂田の口に押し込みながら沖田が不機嫌そうに言った。

「だからって、コイツとポッキーゲームする必要はねえだろ!」
「土方さんの口からポッキーゲームなんて言葉が出るなんて」
「ぷ、くく…」

笑いを堪えている様子の坂田をみると無理やり沖田の腕を掴み、立ち上がせて何も喋らずに坂田に鋭い睨みを効かせながら嫌がる沖田を引きずりながら土方は教室から出て行った


そのあとの2人のことを想像して、坂田はため息を洩らして、ひとり苦笑いを浮かべた。





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