愛してる。
 ずっと一緒にいような。


 そんな薄っぺらい愛の言葉や果たせやし
 ない約束なんてもん必要ないし、いらな
 い。ずっと一緒にだなんてただ、綺麗事
 を言っているようにしか聞こえない。

 ましてや、俺たちが居るのは戦場。いつ
 殺られるかわからない、そんな状況で。

 そもそも、あいつとこんな関係なったの
 はいつからだっただろうか。幾つもの命
 をこの手で奪ってきて、幾度も散らばっ
 た赤をこの眼でみてきた。刃を振り下ろ
 せば視界が赤く染まる。

 いつしか、それが当たり前のようになっ
 ていた。


 そのうち、足りなくなってきた。
 落ち着かないのだ。
 ──斬りたい。

 誰を?

 誰でもいい。

 どうにも渇くのだ。

 頭が、
 本能が、
 赤をみたがっている。


 然し、まだ僅かながら残されている理性
 がそれを抑えてきた、のだが。
 月がみえる夜はその衝動を抑えることが
 できない。赤を、赤をみたい。

 そんな日は、他の奴らに気づかれないよ
 うにして部屋を飛び出す。

 そして、本能のままに斬りつける。敵だ
 と判断した奴、誰彼構わずに。




 だが、見つかってしまった。

 『ねぇ…なにしてんの?晋ちゃん』

 赤く染まって自分の斬り捨てたものを見
 下ろす俺の背後に立っていた銀色に。

 『俺が、その渇き…潤してあげよっか?』

 自分でもわからない。
 その誘いに吸い込まれるように銀色に口
 づけた。






 「う、ぁ…っ、んあっ、銀…時、ィ…!」
 「…っ、は…、高杉…!」

 ぐちゅぐちゅと結合部から卑猥な音が鳴
 り響く。
 こんな夜中に。もしも、他の奴らが起き
 てしまったら。そんな一徹の不安さえも
 今は情欲を煽るものでしかない。

 愛など、無い。ただ、この渇きをどうに
 かしてほしいだけ。
 情事中に名前を呼んだり、口づけを求め
 るのだって、ただの気紛れにすぎない。
 だから、この銀色が愛しそうな微笑みを
 俺に向けるのだってただの気紛れなんだ。


 そう、ただの気紛れ。










 本能
 (だから、愛してるだなんて言わないで)




















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