土方さんと見廻りの日。俺はこんな日が
 大好きだ。いつも仕事が忙しくて2人で
 話せるのなんてこういうときしかないか
 ら。なのに、最近は見廻りでも2人にな
 れない。何故ならば。

 「チッ…」

 土方さんが舌打ちをした。これが、合図
 。土方さんの視線の先には銀髪の天パ。
 俺の中の黒い靄が広がりだす。
 へらへらと笑いながら、よォ、お二人さ
 んだなんて。すると、ほら。

 「てめェ、俺の目の前に現れんなっつっ
 ただろ」

 必ず、同じタイミングでこうやって喧嘩
 をふっかける。あんたの行動なんてもう
 わかりきっているんだよ。そうしたら、
 旦那は勿論言い返してくる。
 嫌いならわざわざ相手を煽るような言葉
 、言わなければいいじゃないか。

 ここ最近はいつもこうだ。こうなってし
 まえば、俺なんかそっちのけで土方さん
 は旦那との言い争いに夢中になってしま
 う。
 あんたと付き合っているのは誰?

 (──…あんたの恋人は俺でしょう)

 楽しそうな土方さんの横顔をみながら俺
 は俺の中で今まで抑えていたはずの感情
 が少しずつ露わになっていくのを感じた
 。

 正常な俺の記憶はここまで。
 気がついたら、辺り一面綺麗な赤に染ま
 っていた。そして、自分も真っ赤だった
 。手には愛刀が握られている。
 赤い世界。その中に土方さんがいた。刀
 を俺に向けながら俺の行動を伺うように
 じっとみつめてきている。瞳の奥には、
 隠しきれない戸惑いと異様な恐怖心。
 それが、酷く心地良くて思わず口元を歪
 める。ギュッと土方さんの刀を握り締め
 る音が聞こえた。
 総悟、と低くかすれた声で名前を呼ばれ
 た。しかし、それには答えずにそっと微
 笑んだ。

 「土方さん、愛してます」

 じりじりと土方さんに近寄り、距離を縮
 めていく。
 あんたがこれから、他の奴のモンになっ
 てしまうのならいっそ、今のままで…─
 。

 「──…だから、死んでくだせェ」

 一際、綺麗な鮮血の華が咲いた。









 鮮血の華に埋もれて












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