2009年12月31日。
 今年最後の日。そして、もう少しで今年
 が終わる。

 遠くから、酒を呑む隊士たちの騒ぎ声が
 聞こえている。膝の上にはミルクティー
 色をした髪の少年。珍しく拒絶の色を見
 せずに不気味なほど大人しく座っている
 。見上げてきたまるでビー玉のように澄
 んだ瞳を愛しげに見つめた。土方は普段
 の鬼のような表情からは考えられない優
 しい表情をしていた。酒のせいか、どこ
 となく瞳をとろんとさせていた総悟が照
 れ隠しのようににやけるな、と悪態を吐
 いた。
 それがまた可愛くてふっと笑う。

 こんなに穏やかな年越しは初めてじゃな
 いのかと土方は思った。去年も一昨年も
 、思い出すのはろくな年越しじゃない。

 さらりと壊れやすいものを扱うようにす
 ぐ近くの栗色の髪を撫でた。ピクッとく
 すぐったそうに身体を捩らせながら土方
 の胸に寄りかかった。土方は自分と総悟
 以外誰もいない、2人だけの世界にいる
 ような感覚に陥った。

 甘い時間。このまま、ずっと続いてくれ
 ればいいと、そう思った。

 「…土方さんの、匂いしまさぁ」

 スンと鼻をならして独り言のように言っ
 た。煙草の匂い、と顔をぺったりと土方
 の胸にくっつける。そのなんとも可愛い
 発言に目の端にほのかに朱が浮かんだ。
 それをみた総悟が顔を伏せた。控えめな
 笑いと一緒にさらさらと髪を跳ねさせな
 がら頭が揺れる。石鹸の香りが鼻を擽っ
 た。

 じわじわと恥ずかしさが込み上げ てき
 て無防備な自分よりも随分と華奢な身体
 を敷かれていた布団に押し倒した。衝撃
 を和らげる為に頭と身体を支えておいた
 から総悟は痛みを感じない。そんな小さ
 な心遣いにすら総悟は胸が締めつけられ
 るような気持ちにされてしまう。

 本人は気付いていないようだが、頬を桃
 色に染めて視線だけを向けるその絶妙さ
 が土方の心を擽り、堪えきれず誘うよう
 なふっくらとした小ぶりな唇に音を立て
 て軽く口付けた。
 最後の最後まであんたは。そんな溜め息
 混じりの総悟の憎まれ口も聞こえないフ
 リをする。嫌がる素振りをみせない総悟
 も、満更でもないみたいで艶っぽい声で
 土方の名を囁き、口付けを求めた。
 口角が上がるのを感じながら再び唇を重
 ねた。すると、総悟は満足げに土方の首
 に腕を絡めた。


 * * *


 くちゅ、と卑猥な水音が部屋に響く。
 大広間は副長室から離れたところにある
 し、部屋には土方と総悟以外に誰もいな
 い。そのせいで余計にそれは響き渡り総
 悟の耳を犯す。やめろと言ってもこの男
 には無駄だとわかっているので、言わな
 い。せめて声だけでも、と腕を口に当て
 るが土方の手によって阻止された。墓穴
 を掘ったのか、土方はわかりきっている
 総悟の一番感じる一点に指をのばす。目
 を瞑っていてもわかる土方の指は的確に
 そこに辿り着いて更に総悟を追い詰めた
 。腰にクる総悟の嬌声を聞いて土方も確
 実に理性を崩されていく。

 「やあ、あ、土方さ、」

 中途半端にはだけている総悟の寝間着か
 ら覗いている突起に触れようとしていた
 土方は名前を呼ばれて普段と変わらない
 口調で返事する。しつこく焦らしていた
 土方は総悟がそろそろ何を訴えてくるか
 わかっていた。掻き回す指は止めないま
 ま、先ほど弄り続けていた故に赤くなっ
 ている突起を優しく撫でた。

 「ん、ああ…っ、はや、くっ」

 意地の悪い笑みを浮かべて、土方は総悟
 の言葉を聞きながらも知らん顔をした。
 すでに限界を訴えるいまにもはじけそう
 な総悟自身はとめどなく先走りを溢れさ
 せている。涙を堪えながら総悟は必死に
 土方に懇願するが、土方は笑みを浮かべ
 たまま。

 「ふ、ぁんっ、あ」
 「ちゃんと言わねーとわかんねえぜ?」
 土方だって、今年最後なのだから優しく
 しようと思っているのだが乱れた総悟を
 目の前にするとついつい苛めてしまう。
 土方も総悟に劣らない、いや総悟以上の
 Sなのだ。

 「んあっ、あ、じか、んが…っ」

 喘ぎながら途切れ途切れに時間、と口に
 する総悟に土方は黙って続きの言葉を待
 った。総悟の痴態に土方の理性もすでに
 残りわずかだったが、それも総悟の言葉
 によって完璧に崩れ落ちてしまった。
 早急に指を引き抜くと土方は張り詰めた
 自身を取り出してひくついている総悟の
 蕾にあてがった。びくっと総悟の身体が
 期待に震える。汗ばんだ総悟の額に軽く
 キスすると一気に自身をおしこんだ。

 「っ、ああぁあっ!」

 きつい締め付けに思わず達しそうになる
 。苦しそうに呼吸をする総悟に力を抜け
 と声をかけるも、無理だと返されてしま
 った。総悟自身を扱いてやるといくらか
 力が抜けたようだったが、珍しく土方は
 いつものような余裕はなく動くぞ、と言
 うと総悟の制止の言葉など無視し、腰を
 動かし始めた。

 繋がったままで年を越したい。
 あの総悟の口からこんな台詞が出るだな
 んて思いもしなかった。汗と涙に濡れた
 総悟の顔をみてどくりと中心に熱が集ま
 るのがわかった。
 総悟は甘い声を洩らしながら顔を歪める
 。熱い吐息を混じらせて来年もきっと嫌
 というほど言われるだろう悪態を呟いた
 。呟きと同時に除夜の鐘が聞こえてきた
 。いまの2人の状況とはまるでかけ離れ
 ている穏やかな鐘の音。それに一瞬、気
 を取られた土方の首を総悟は真っ白な細
 い手で引き寄せた。不器用に唇を押し付
 け、快楽に溺れた瞳に土方を映す。土方
 は噛みつくようなキスをすると、総悟を
 抱き起こして自らの膝に跨がせた。今ま
 で以上に奥へとはいってくる感覚に総悟
 は絶え間なく喘ぎ声を上げ続ける。土方
 は一度離した唇に再び口付けながら止ま
 っていた律動を再開した。


 * * *


 「ふあっ、も、う…イッ、ぁあんっ」
 「っ、イけ、よ」

 びくびくと背中を反らして総悟は白濁を
 吐き出した。土方も達すときの総悟の強
 い締め付けに堪えられず、遅れて総悟の
 中に欲を吐いた。くたりと脱力して土方
 にもたれかかった総悟が土方の白濁を感
 じて甘ったるい声を出した。どのくらい
 鳴り響いたかわからない除夜の鐘を遠く
 に達し後の余韻に浸る。2人の荒い息遣
 いと鐘の音だけが耳を支配する。

 「…来年こそは、」

 時計をみた総悟が呼吸を整えながら言っ
 た。

 「副長の座、奪ってやりまさ」
 「…上等だ」

 無邪気に笑う総悟に土方も自然と笑みが
 こぼれた。不意に総悟の表情から子供っ
 ぽさが消えて、大人びた微笑みが浮かび
 上がった。

 「……土方さん、」







 108回目の鐘の音と同時に


 「すき」















 100101
 100810 修正
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -