「あー、疲れた」
 「疲れるんならやめればよかっただろ…
 」
 「嫌でぃ」

 土方の自宅へととぼとぼとふたり並んで
 歩く。もう既に人通りはなくなっていて
 まわりの住宅も電気がついているのは数
 えれるくらいしかない。

 土方は昼間に珍しく自分から女装をする
 と言った沖田に自分の為なのか、と一瞬
 期待するもクラスの奴らに見せるという
 言葉にがっくりと肩を落とした。
 なんとなくはわかっていたのだが。あの
 沖田が、あのプライドの塊のような人物
 が土方の為にそんなことをするわけがな
 いとわかりきっていることなのだが、改
 めてはっきりと現実を思い知らされるよ
 うな言葉を聞かされると流石に落ち込む
 。
 それと同時に女装した沖田を他の奴には
 見せたくないという独占欲が湧いてきて
 しまいもうどうしようもない。そもそも
 土方は魔女の格好をしてクラスの家をま
 わることなど最初から反対していたのだ
 。
 大体、町中をその格好で歩くのだ。反対
 するに決まっている。しかし、沖田はこ
 ういうことには恥ずかしさというものは
 感じないのだろうか。いくら、ハロウィ
 ンだからと言ってもそんな格好をして歩
 いている奴などいない。その点に関して
 は理解し難い。沖田の頭の中は全くもっ
 て理解不能だ。

 「…なあ、ところでお前寒くねぇの?」
 「ふえ?」

 沖田はミニスカートを履いている。季節
 を考えてみるともう秋だ。だんだんと気
 温が下がってきている中、ましてや今は
 夜なのだから冷え込むだろう。きちんと
 着ている土方でも肌寒いくらいだ。沖田
 はもっと寒いだろう。そう思って土方は
 最近冷えてきたからな、と素直に自分の
 思っていることを口に出すとおっさんみ
 てえ土方さん、と言ってきた。土方はぴ
 くりと頬の筋肉が動いたのが自分でもわ
 かった。
 そんなこと気づいてもいない沖田は淡々
 と道を歩く。土方はその背後へとのそり
 と近付けばにやりと厭らしく笑いながら
 露わになっている沖田のすべらかな白い
 太ももにするりと手を這わせた。

 「ひゃあ…!?」

 驚いたのか沖田は大きく身体を跳ねさせ
 てなんとも素っ頓狂な声をあげ立ち止ま
 った。沖田の足は案の定冷たくて、この
 ことに関しては小さく溜め息を吐くが驚
 いた沖田が此方を振り返る前に、とその
 冷たい太股を撫で回した。

 「ほら、こんなに冷たくなってんじゃね
 ーか」
 「っ…離…し、ぁ…」

 明らかに言っていることとは違う意志が
 ある土方の手に俯きながら必死に沖田は
 耐えていた。 しかし、土方は一向に沖
 田の太股から手を離そうとしない。涙を
 滲ませながら羞恥で顔を真っ赤に染める
 沖田をみて土方は満足げな笑みを浮かべ
 るが、逆に沖田は不満げな悔しそうな表
 情をしている。

 すると、何か閃(ひらめ)いたのかにやん
 とあのいつも悪戯が成功したときにする
 Sっ気満載の笑みを浮かべ土方を振り返
 った。その笑みをみて一度も良いことは
 起こっていない。だが、しかし、悪いこ
 とは百発百中という勢いで必ず起こる。
 それに感づいた土方はすぐに手を離した
 。思わず、沖田に怯えるようにしてしま
 った自分に舌打ちすると、沖田も悔しそ
 うに舌打ちした。

 「ちっ…痴漢って叫んでやろうと思った
 のに」
 「てめっ…!」

 土方は正直、離して良かったと思った。
 あの沖田のことだ。土方を困らせるのが
 生涯だというのだから、必ずやるだろう
 。

 「お前なぁ…それが恋人にすることか?
 」
 「あんなどっかの変態キモ痴漢親父みた
 いなこと普通恋人にしますかィ?」

 土方は一瞬言葉に詰まるが、恋人同士な
 んだしと開き直り自信ありげな表情を沖
 田にみせる。

 「…い、いいだろーが恋人同士なんだか
 ら」
 「いや、理由になってねぇし。死ね土方
 」

 そんな言い争いをしているといつの間に
 か土方の家に着いていた。


 * * *


 家の中に入ると部屋は真っ暗でシーンと
 静まり返っていた。土方が電気のスイッ
 チを押すといつもの綺麗な余計なものは
 ひとつもない土方の部屋がみえると同時
 にいきなりの光に目が霞んだ。沖田は皺
 一つなくきっちりと敷かれているシーツ
 のベッドに思い切り飛び込んだ。

 「はぁー、疲れたー」

 そんな沖田に土方はくすりと笑いを零し
 ながらテーブルの上に中はくずれている
 だろうお菓子を置いた。ふとベッドに仰
 向けになって寝そべっている沖田に視線
 を向けると土方はぴたりと固まってしま
 った。

 「っ…おま…」

 自分のベッドに寝そべっている恋人から
 目を離せなかった。仰向けになっている
 のはいいが片膝を立てていて本人は気付
 いていないのかスカートがめくれていて
 肝心な部分がみえるかみえないかくらい
 になっているのだ。言葉よりも先に身体
 が動いてしまう。余程疲れたのか腕を額
 に当てて瞳を閉じている沖田に近付いて
 いき、ぎしりと音を立てながらベッドに
 膝を乗せると露わになっている片膝を立
 てている方の太腿の裏側を厭らしい手つ
 きで撫であげた。

 「ひっ、ぁん」

 不意打ちだったせいもあるのかびくりと
 大袈裟な程に沖田の身体がはねて、なん
 とも甘い声をもらした。もともと、敏感
 で太腿の裏側が沖田は感じやすいという
 ことを知っていて土方は勿論やった。案
 の定、ずしんととてつもなく腰に響く甘
 ったるい声を聞かせてくれた。

 「何、しやがる…っんの変態!」

 すぐさま、腕を目元から外すと今度は口
 元に持っていく。真っ赤になってぎろり
 と睨み上げてくる沖田だが、その瞳の端
 には僅かだが涙が滲んでいて、僅かとい
 うその微妙な量で尚且つ上目で見上げら
 れてはあの土方の理性が持つはすがない
 。

 「どけなせぇ、ばかひじか、」
 「trick or treat?」

 喚く沖田の耳元で情事を思わせるような
 低い声音で囁く。
 沖田を見つめるその表情はあまりにも妖
 艶で吸い込まれてしまいそうで。
 それは悪魔の誘いだとわかっていた。わ
 かっていたのに。








 甘いお菓子よりも、もっと甘い悪戯をちょうだい














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