「げっ…」
なかなか非番の日が重ならず、ふたりで
居られる時間が少ない中の貴重な見廻り
なのに最悪な相手に出会ってしまった。
一瞬で気分がブルーになった。ああ、切
開総悟と二人きりだったのに。
しかし、総悟の方はというと、
「旦那!」
と語尾にハートマークでも付きそうな勢
いで言うと忌ま忌ましいその銀髪に抱き
付いた。
「なっ、総悟!」
なぜだかわからないが、総悟は銀髪野郎
もとい万事屋に懐いているのだ。だから
、コイツに会う度に総悟は抱き付いたり
する。
「沖田くんじゃん!奇遇だねー」
もしかして運命?などとほざきながら万
事屋は抱き付いている総悟の頭を撫でた
。総悟はそれに嫌がる素振りもみせず、
寧ろ嬉しそうに俺には見せたこともない
ような笑顔を向けている。もちろん、俺
からしたら気にくわないに決まっている
。すぐにでも引き剥がしてやりたい。
だが、いまこの時点でそんなことをした
ら嫉妬心丸出しだ。それは気が引ける。
「旦那、今日暇ですか?」
そんなことを考えていると総悟はなんと
も意味ありげな事を万事屋に聞いた。
すると、万事屋は
「暇!沖田くんが暇なら絶対暇だからっ
」
なんて意味不明な事を言った。
「まじでか。じゃあ、パフェでも食いに
行きませんかィ?」
俺の奢りですから、とにっこりと笑う総
悟にぴくりとこめかみが震える。
何言ってんだ、あいつは。そんなこと、
俺が許すわけねえだろ。
「いいよ、行こうぜっ。でも、パフェも
いいけどー…俺は沖田くんがた」
「ふざけんな。さっさと行くぞ、総悟」
俺が言うと万事屋は一瞬固まったがすぐ
にニタリと嫌な笑みを浮かべ此方をみた
。
「何?多串くん、嫉妬ー?」
「ああ、そうだ。悪ィか。…オラ行くぞ、
総悟」
「へ?ちょっ、やめ、離っ…」
暴れる総悟の腕を引っ張って万事屋の横
を通り過ぎた。
* * *
「、土方さん!ちょ、離してくだせェ!
」
「…」
「土方さっ…、ッ」
ぎゃあぎゃあ騒いでる総悟を路地裏に連
れて行きその煩い唇を噛みつくようなキ
スで塞いだ。
「んんっ…んっ…は、」
一度離して再び口づける。 逃げる舌を
優しく絡みとり息も出来ないくらいしつ
こく総悟の口内を犯しつづけているとや
はり苦しくなったみたいで胸をドンドン
と叩かれた。しょうがなく、最後に舌を
吸い上げると名残惜しそうに銀の糸が伝
って切れた。
「はぁ…っ、な、にっ…するんでィ!く
そ土方っ」
ぎろりと睨まれたが、頬を赤く染め苦し
そうに肩で呼吸しながら、加えて身長差
で必然的に上目遣いでされても迫力は全
くない。
「だいたい、切開旦那と話してたっての
にいきなり腕引っ張って無理やりこんな
路地裏に連れてくるなんて最悪でさ!ア
ンタが嫉妬すんのは勝手ですがね、こっ
ちにまで八つ当たりしてこねえでくださ
い。俺が誰とパフェ食いに行こうがアン
タには関係ねえでしょう。それに、」
と、そこまで言って総悟はしまった、と
でも言うように口を閉じて顔を逸らした
。
「あ、土方さん…?」
「へえ…関係ねぇんだ…?」
嫉妬するほど君が好きなんだ
100810 修正