確認


先日、愛書家と呼ばれる猟書家の男を団長の指令、もとい旅団の仕事として殺した。
念能力も何もない人間で、殺すにしてはつまらなかった。
そんな程度の仕事だった。
団長は先日からずっと蔵書へ閉じこもり続け本を読み漁っている。
暫くはここが仮のアジトになるようだ。
莫大な遺産を持ってして、無駄に広い屋敷と大量の本を所持していた家主は、あまり外へ出掛けたりしていない事からの判断のようだった。
あまりに明るく住みづらい。
初めの感想だった。
旅団メンバー以上もある部屋の中で、一番隅の陽の当たらない場所を選んだ。
フィンクスに「相変わらずだな。」と言われたが無視をした。
静かな屋敷の隅で、今は亡き家主から拝借した拷問書を捲っては時間を潰す。
何もする事がなく、今日もそうやって過ごそうとした時だ。
本を未だに読み続ける団長から招集が掛かった。
招集と言っても全員じゃない。
今この屋敷にいる奴等だけを集め、大広間へと出る。
団長はそこに居てソファーに腰掛け右手に本を持ち、目線を上げずに待っていた。
着々と人数が揃う。
フィンクスにシズク、ワタシにシャルナーク、そしてフランクリンのメンバーだ。
団長は口を開く。

「今ヨークシンにある市街地でサーカスが行われているそうだ。
主に珍獣やらのパフォーマンスがあるらしい。」

「そのサーカスは聞いた事はあるけど、あまりめぼしい物はないんじゃない?
珍獣だって珍しい事には珍しいけど、見た事がない訳でもないし。」

団長にシャルナークが意見を出す。
他のメンバーは興味が無く二人のやりとりを聞くだけに止まった。

「あぁ、そうだな。
でも俺が欲しいのはそっちじゃない。」

「もしかして、最近話題の女の子?」

「そうだ。
今度はそいつを狙う。」

「サーカスにいる女?」

フィンクスも話しに介入する。
シズクもフランクリンも耳を傾け団長達の話に入る。
ワタシも例外じゃない。

「うん。
今そのサーカスが人気でね、珍獣の調教さがウリだったんだけど、どうもここ2ヶ月様子が違うらしいんだ。
それが、いくら怪我を負ってもすぐに治っちゃう女の子がいるらしいんだよね。」

「他にも歌声が魅力だな。
そいつの歌を聴いた者はどんな病気、怪我をもたちまちに治るらしい。
念の使い手だろうとは皆目検討も付く。」

「団長はその子が欲しいの?
その子の力が欲しいの?」

団長のページを捲る手が止まる。
一度深く深呼吸をして本を閉じた。
そしてソファーから立ち上がり出入り口へ足を運んでいく。

「出来るなら両方さ。
そいつには興味があるし、一度話をしておきたい。
今から下見をしに行こうと思うが、そうだな・・・。
フェイタンとシャルナーク、一緒に来てくれないか?」

「・・・団長命令なのに逆らう訳ないだろ?」

シャルナークの問い掛けに全員が頷く。
団長は軽く笑ながら行くぞ、と足を歩めた。
いつもならそう言う特殊な能力の話を聞けば拷問や、相手の痛めつけ方について色々思考するのだが、今日は何も頭に入って来なかった。
自分らしくない、と更に顔を隠す。

「フェイタンどうしたの?」

シャルナークが様子を伺ってくる。
団長も不思議そうな顔をしてワタシを見て来た。
あまりにも気分が乗らない。

「・・・なんでもないね。」

恐らく今日も暇になるのだろう。



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