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試合は圧倒的点差をつけてカラフルチームが勝利した。
相手のチームは悔しくも、当たり前であるかのような表情をして各挨拶をして休憩に入っていった。
それはもう初めから諦めているようでもあり、同情を持つ。
カラフルなチームは云わば天才的な人達の集まりであるのだろう。
一人一人才能に恵まれている、そんな印象を受けながら桃ちゃん先輩に再度仕事の内容を聞いておく。
これで帰れたら願ったり叶ったりなのだが、人手が足りないと言った辺り、まだ滞在しなくてはいけないのだろうと言う事は目に見えていた。
全く面倒くさい世の中だ。

「桃ちゃん先輩、仕事まだありますよね?」

「うん、あるよ。
ボールの固さの点検とか、スコアボードを付けたりとか、後は・・・」

聞いていくだけで嫌になっていくような仕事内容に内心焦っていくのが分かる。
それだけの量をやらされるのかと考えるだけで身の毛がよだつ。
私の皮膚が鳥肌に覆われる前に、懐かしい声が私の耳に響いてきた。
私は助かったと思う反面、面倒な事に巻き込まれそうな予感に陥る。

「久し振りだな桜!」

「お久し振りですね、えと、大ちゃん先輩」

私が昔懐かしい呼び方のままその人の名前を口にすれば、相手は戸惑いも何も感じさせないような笑顔を向けて背中を叩いてくる。
正直に言えば、私は今怒りを隠しきれない。

「まだその呼び方は健在だな!
変わらねえなぁお前!」

「やめてください。
やめないとその黒い肌を更に黒くしますよ」

右手で大ちゃん先輩の手を払い除ければ「やれるもんならやってみろ」と笑われて頭をぐしゃぐしゃに掻き乱される。
私の風に揺れる髪がしなだれるように元気を無くし落ちていった。
この人に何を言っても無駄だ。
誰か何とかしてくれ、と心の中で叫んでみるが皆見てみぬフリだ。
何だ先輩方、今晩呪ってやるぞと密かに計画を立てた。

「ちょっと!桜が嫌がってるじゃない!!」

「いいんだよ、俺は嫌がってないから」

「理不尽!!」

いつもの如く、争いを始める二人の間から脱け出して一息着く。
二人共変わらないな、としみじみ感じていれば後ろから肩を叩かれた。
反射的に振り向けば窓辺の黄色い人が立っていた。
興味深そうに私を見る目に前とは違う違和感を覚えたが、何も考えないようにした。
考える分だけ面倒だからである。

「君、青峰っち達とどういう関係なんスか?」

いかにも意味深キャラ、誰かに恋してる女子キャラのような言葉を男子に、しかも先輩に言われるなんて誰が思うだろうか。
少なくとも私は思わない。
だから驚いた。
そして存在自体が目立っているんだから話し掛けるなとも思った。

「手っ取り早く言うなら主従関係です」

「は?」

「違う!違うからきーちゃん!」

先程まで大ちゃん先輩と争っていた桃ちゃん先輩が私の返答に否定文を差し込んだ。
昔パシリによく使われていたからあまり間違いではないと思うのだが、どうやら違ったようだ。

「この子は私達の小学生からの先輩と後輩っていう関係!」

「まあ、そう言うともいいます」

「そうしか言わないんだよ!?」

私と桃ちゃん先輩の会話が面白いのか、黄色い人は只笑って「そうなんスか」と呟いた。
私は何故この人は笑っているのだろうと思っていると再度頭を掴まれた。
誰かなんてとっくに分かっている。

「何ですか大ちゃん先輩」

「桜、また俺と勝負しようぜ。
次は俺が勝つから」

「嫌です、面倒くさい」

視線を大ちゃん先輩から逸らせば、まるで納豆の如く粘ってくる大ちゃん先輩はしつこい。
だからずっとあしらいでいけば、有り得ないと言う顔をする黄色い人が視界に入ってしまって、度重なる面倒事に足を掴まれているような錯覚に陥った。

「えっ!?青峰っちが負けるってどういう、」

「そのまんまの意味だ。
こいつに俺は負かされっぱなしなんだよ」

軽く説明を入れる大ちゃん先輩をこれ程恨んだ事はない。
よく分からない感情が黄色い人から感じる。

「青峰っちに勝つなんて君なんなんスか!
俺まだ勝ったことすらないし、今でも毎日挑み続けてるのに本当に君なんなんスか!
どうやって青峰っちに勝ってるんスか!
是非俺に教えて欲しいんスけど!!」

目を逸らし続ければ問いつめらる始末で私は悪戦苦闘状態だ。
近付いてくる顔、絶え間無い言葉の数々。
私のこれで何度目かになるか分からない心の叫びはまだ誰にも届いていない。

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