「(面倒くさいなあ)」

窓際で朝日が差す中、肘を付きながら空を見上げた。
何が面倒か。
それは今行われている社会の授業だ。
社会担当の先生は何かと私を指名してくる。
主に教科書の内容を読むだけだからまだ良いとする。
しかし問題はまだある。
それは社会の授業以外にも当たる確率が高いこと。
先生、何故いつも私を当てるのですか、と溜め息を吐いた。
現実逃避に空は青いな、と何でもない風な事を考えていれば下から何やら黄色い声が聞こえてくる。
煩いな、と他人事で思っていると後ろから肩を叩かれた。
振り返るとそこには私との仲が良い藤田さんが嬉しそうな顔で話しかけてきた。

「桜ちゃん今ね、体育のテストで、モデルやってる黄瀬先輩がサッカー部の先輩を圧してるんだよ!
かっこいいよね!」

目をキラキラとさせて外を見る藤田さんはその黄瀬先輩とやらを応援しているようだ。
私は試しにと覗いてみる。
黄色い髪をした人がゴールを決めた。
周りの女子がより一層その人へ歓声を上げる。
後ろからは藤田さんが「かっこいい!!」と呟いていた。
周りから認められて、羨みや妬みが犇めいてるその場所にいるのに、先輩はくだらないと、否、根本的に言えばつまらないと言う雰囲気が窺える。
私はそこに興味を持った。
そんな逸材がこの先何をして感動するのだろうと。
でも、と先輩から目を離せば先生に当てられる。
皆から注目を浴びながら立ち上がって教科書五十六ページ、七行目を読み始める。
しん、と静かな教室に響く私の声。
読み終わるといつも通りに先生が「上手く読めた」と言ってくれる私の一日。
あぁ、なんと面倒くさい。
一言一句、行動、行為、動作。
何もかもが面倒くさい。
人と話すのも、食べるのも、運動するのも。
先輩に近寄る依然に、呼吸をするのも面倒くさい。
だから私は、人に囲まれながら誰にも干渉することなく、生きていく。
面倒くさいけどそう決めた私の面倒くさい人生論。
授業を受けるのも外を眺めるのも疲れた。
酷く重い瞼を流れに沿って下へ落としていく。
何故か先程の光景が頭を過る。
黄瀬先輩か、と頭に思い浮かべながら、暗い空間に身を置くべくして目を閉じた。


めんどくさがり少女















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