忍ぶ影

綺麗な夕焼けが映える空を図書室から眺めて作業をする。
愛ちゃんが言う図書の仕事とは本の点検らしい。
欠陥がないか、作者順に並んでいるか、返却が遅くなっている生徒がいないか、等の仕事だ。
これらは先生に頼まれてやっているのではなく、愛ちゃんがやりたくてしているのだそうだ。
愛ちゃん曰く、「図書室は神聖な場所」なので毎日の点検は欠かさないらしい。

「ごめんね。
本当はもう一人居たんだけど、用事で今日来れないらしくてさ」

私は気にしないよ、と表情で返す。
愛ちゃんは申し訳なさそうに笑って「ありがとう」と呟いた。
家に帰っても何も用事がない私は唯、只管に作者の名前を追っていった。
愛ちゃんが話してくれる会話を、返事がないながらも頷きながら作業をこなす。
すると、は行に差し掛かる時に、図書室の扉が開いた。
本の返却だろうか、と中へと入ってくる人を一目見る為に首を動かす。

「あの、」

「うわあ!?」

振り向いた先には誰もおらず、私とは逆の方に居た愛ちゃんが驚いた声を出した。
いきなりに大声をあげるものだから、それに驚いてしまった。
愛ちゃんの方を見てるとそこにはいつの間にそこにいたのか、黒子さんが当たり前のようにそこに立っていた。
先程の声と同様に、黒子さんの存在にも驚いてしまった。
毎度のことながらすいません黒子さん。

「黒子君か、びっくりするなあ、もう」

「すいません、普通に入ってきたつもりなんですが・・・」

「それもびっくりだよ。
あ、それよりもまず黒子君が来た理由だけど、あの子は今日はいないよ。
用事があるからとかなんとか」

少し離れた距離だと何を話しているか分からないが、聞いてはいけない会話な気がする。
それだけを確かにして私は自分の作業へと移った。
黒子さんと愛ちゃんは話が終わったのか、会話は聞こえなくなっていた。
少し気になり顔を上げると黒子さんと視線が合う。
軽くお辞儀をして愛ちゃんの元へと近寄った。
愛ちゃんを見ると少し微笑んでいる。

「凜も頑張りなよ」

それだけを言われて肩を叩かれた。
あと少しで終わる図書室の整理。
傾きかけた夕焼けは、室内でも分かる程に眩しくも優しい光を私達に照らしていた。





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