再会



廊下を走ってきて、峰ちん達の教室に駆け込んで見渡せば数の少ない生徒の中にあの子がいた。
峰ちんの言った目元過ぎの前髪の情報は間違っていたけど、すぐに見付ける事が出来た。
歩いてあの子の前にしゃがむ。
驚いているのか顔を上げずに俯いている。
俺は忘れられていないか不安だったけど、声を掛けてみた。

「凜ちんだよね?」

俺の言葉にばっ、と顔を上げるその子は前と比べて顔付きは少し変わってはいたが、やっぱり前のままだった。

「凜ちん?」

顔を覗き込む様に見てみれば、凜ちんは目からボロボロと大きな涙を流して口を結んでいた。
その状況に狼狽えて何をすればいいのか分からなかった俺は「どうしたの?」と袖口で目元を拭う。
それでも溢れてくる涙は重力に従って下へ落ちていく。
凜ちんは頭を横に振ってから机の中から紙とペンを取り出して文字を書いていく。
そう言えば、と峰ちんとミドチンの言っていた言葉を思い出す。
喋れない。
だから手話も何も分からない俺達の為に紙に書いて言葉を出しているんだ、と思った。
小学生の時は喋れていたのに。
そう思うと、凜ちんが引っ越して行った場所を憎く感じる。
凜ちんの目元から離した手に拳を作っていたら、紙を渡された。
丁寧で分かりやすい字だった。

『久し振りだね紫原君。
いきなりごめんね、泣いちゃって。
ただ嬉しくて、紫原君が悪い訳じゃないよ』

擦って涙を拭いたから少し目が赤くなっている。
俺は嬉しさとさっきの怒りで変な気持ちになって、よく分からず凜ちんの頭を撫でた。
俺の行動に凜ちんは戸惑っていたけど、顔を赤らめて少しはにかんでいた。
鼻を過ぎた前髪じゃ表情は見えなかったけれど、耳が赤かったから分かった。

「本当に久し振りだねー。
元気だったー?」

遠回しに向こうの事を聞けば暗くなって、手に持ったペンが動かなくなった。
少し震えているような、そんな雰囲気に益々腹が立った。

「言いたくないなら無理に言わなくて良いよ?」

そう言えば重くもペンが動いた。

『あっちは、キレイだったよ。
でも、私が悪い事したから、向こうの気分を悪くしちゃって』

目を伏せる凜ちんは辛そうだったからその後の事も聞きたかったけど止めた。
俺は凜ちんをこんな目に合わせる為に来た訳じゃない。
だからもう一度頭を撫でた。

「ごめんね」

『ううん、紫原君は悪くないよ』

へらっと笑った凜ちんを見て胸が痛くなった。
我慢してるのは分かったけどすぐに虚しくなる。
あぁ、そんな顔しないで笑って、あの頃みたいに。
一緒にいた日々を思い出して俺は凜ちんを抱き締めた。


再会














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