「奏、いる?」

「あら、シズクちゃんじゃないの!
やだ!今日来るなら色々準備したのに〜!!」

無駄に体を縦横無尽に動かしながら、ダイビングから現れるのは奏と言うオカマだ。
彼の素性は謎に包まれている。
それは私が幻影旅団に入ってからもずっとそうだ。
だからと言って謎を解こうとも思わないけれど。

「兎に角、お腹空いてるでしょう?
全くいつも私の家に来る時はそんな理由なんだから!」

なにも言わなくても晩御飯の準備に取り掛かる姿は長年連れ添った夫婦の妻のようだと思いながら部屋へ上がる。
綺麗に手入れが整っている部屋は女子力の塊だ。
本当に男なのか疑問にもなるが見た目は立派な男のガタイそのものだった。
本当に不思議な人だ。
以前、攻撃を与えればどうなるか気になって寝込みをデメちゃんを使って襲撃したけれど一回も当たる事なく回避されたのは覚えている。
フェイタンや団長が懐に入っても、全てを避け切る事が出来るかもしれない。
遠、中距離のフランクリンの"俺の両腕は機関銃"でさえも当たらないかもしれない。
実際、奏と一度だけ戦ってみたが擦り傷一つさえつかなかった。
仕事も、なにをしているか分からないし、シャルナークに調べてもらってもなにも分からなかった。
本当に、不思議な人だ。

「ごめんねぇ。
パスタでも良かったかしら?」

「うん、いいよ。」

こうして出される料理も短時間で作ったとは言え、高級料理を食べているような美味しさを兼ね備えているから更に不思議だ。
出来上がったボンゴレパスタを一口、口に含むと奏は向かいの席に座った。
いつもの事でなんら気にせず咀嚼する。

「シズクちゃん非番なの?
ヨークシンにまで来て。」

「旅団の仕事が終わったから非番というか活動停止だよ。
なにもやる事がないから此処に来たの。」

「あら、なら居候って事かしら?」

「うん、早い話そうだね。」

そうだ。
前の美術館の名作と呼ばれる品々を盗んだ仕事。
後始末をしてから出番もなにもやることがなくなったのは本当だ。
だから一時解散。
場所もヨークシンからそう遠くはないところであったし、宿探しと無料での食事を必要としていたから丁度良かったこの場所を選んだ。
だから私は此処に来たのだ。
理由それ以上でもそれ以下でもない。
私はパスタの最後の一口を、口内へ押し込んだ。

「じゃあいつまで家にいるつもり?」

「次の仕事までかな?」

「不定期ねぇ。
なら明日から私に付き合って頂戴よ!」

「はい決まり!」っと、私の意見に聞く耳持たず決められた。
あまり面倒な事はしたくないなと、頭の隅で考えながら奏を見る。
笑顔で、食べ終わったお皿を流し台へと運んで行く。

「(取り敢えずお世話になるし、仕方ないか。)」

椅子から立ち上がり、ソファーへと場所を移してテレビを付けた。






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