生きていれば楽しいことだってある。
普段から楽観的でいればそれはそれは人生薔薇色だ。
縮小するだけの能力を持つ俺でもなんとかここまでやっていけたのには、やはりそういうもののお陰だろう。
人を殺めていたりすると中々萎える時もあるが、目の前に自分の好きなものが目に入った時はテンションが上がる。
この前なんてリーダーからいきなら仕事が入ったなんて夜中に言われたんだぜ?
疲れるわ、給料も低いわで内心滅入ってた訳よ。
でな、帰り道を歩いていたら突然に、そう唐突にだ。
真っ白な綺麗な猫が目の前を横切ったんだ。
触ろうとしたんだけどよ、やっぱり触らせてくれねえでそのまま猫が立ち去ったんだよ。
悲しかったが、最悪な日の中で綺麗な猫をその日に見れたんだぜ?
それだけで俺は嬉しくて明日も頑張るか、って気持ちになっちまったんだよ。

「ふふっ、猫好きにはたまらない出来事ですね。」

「あんたは好きな動物とかいないのかい?
物とかでもいい。
それだけでも毎日の見方が違ってくるさ。」

とあるカフェで柔らかい笑みを浮かべる女と話す。
女は奏と言い、スタンド使いだ。
攻撃をしてくる訳でもない、相手を拘束するでもない、唯夢の中で相手と話すだけの能力、らしい。
本人から聞いただけの能力は、未だ謎な部分も多くあるが、奏とは何度も夢の中で会い、話すだけのやつだ。
現実では会ったことはないが、随分と長い間奏と話していれば分かる。
こいつはなにもしない。
雑談を楽しむ普通の女性だ。
危害を加えるなんて最初からない事は誰にでも分かった。
奏は退屈している。
それだけだ。

「好きなもの・・・。
・・・ないかもしれません。
でもホルマジオが猫が好きなら私も猫が好きなのかもしれませんね。」

「相変わらず俺の事が好きだね〜。」

そんな軽口を叩いて笑えば、奏も笑みを零す。
素直な奏。
そんな可愛い奏。
惹かれちまった俺は後戻りも出来ない。

「好きなんですよ。
実際。」

呟くように放たれた言葉も全部聞こえている。
青空の下のオープンテラスに奏と俺がいる。
恥ずかしさも、虚しさも此処には存在しない。
此処にはコーヒーの匂いと爽やかな風が吹くばかりだ。
両思いな俺達は片思いに憧れる。
まだ、愛の告白は早いだろう。
お互い理解している。
だから今日も他愛のない話でも駄弁ろうか。

「しょ〜がね〜な〜。」

「しょーがなくないですよ。」






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