「えへへ〜、ただいま〜。」

今日は会社での飲み会に強制参加で、上司から嫌がらせかと言うぐらい酒を注ぐに注がれ、飲みに飲みまくっていたらこんな状況になった。
足元がしっかりしておらず、ふらふらな頭はぼんやりと高揚している。
電気が点いていない部屋の中は真っ暗だが、確かに人はいる。
私はそう確信して部屋の奥へ進んで行く。
そしてリビングへと足を踏み入れた。

「ん〜〜!の〜せんきゅうぅ〜!!」

「なにに対してだ。」

部屋に灯りを点せば、窓の外を眺めていた男がこちらを振り返る。
私はそれが唯々嬉しくて笑顔になる。
そして床へダイブした。
床と言ってもマットが敷いてあるお陰で冷たくはない。
横になり、暫くゴロゴロと転がっていれば「風邪を引くぞ」と男が言った。

「ん〜、えへへ〜、あはは〜。」

「大分飲んだな。」

「飲まされました〜!
ワムウ、ちょっとこっち〜。」

思考力が低下していても冬に近い気候は中々肌寒い事は分かる。
酒を飲んでいても冷えるのだ。
男、ワムウは数ヶ月前に突如私の家にいた異世界の住民らしい。
行く所も帰る場所もないのだと言う。
私は未だにそれが嘘なのではないか、と思っているのだが嘘を付いても仕方が無い状況だった為に、貯金が少ないながら同居らしい形をとっている。
出ていけとも言えなかったのは私が純粋な日本人だからなのかは、はっきりと解明していない。

「ワムウ〜ぎゅーして!ぎゅー!!」

「子供か。」

「さーむーいー!」

駄々をこねるのは酒のせいだと信じたいが、なんだかんだ私のお願いを聞いてくれるワムウは優しい。
寝転がっていた私を軽々と抱き起こしては軽く抱き締めてくれた。
人間ではない、と前に言われた時はどうしたものか悩んでいた時期があったが、体温はある事を知ってからはどうでもよくなった。
暖かいのは中々に幸せだ。
私もワムウの背中に腕を回す。
やはり、暖かかった。

「うーん、マッチョ〜。」

「だからなんだ。」

「えへへ〜。」

段々眠くなって来た意識の中で私を抱き抱えたまま電気を消す。
あぁ、そう言えば明るいのは落ち着かないのだったっけ?
機能しない頭でそう思いながら私は眠りに就いた。
明日になって取り乱しながら謝罪の言葉を無理矢理ワムウに言い聞かせ続けるのは、また別の話である。







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