ジョジョとの、死闘に敗れた時の事だ。
宇宙に投げ出され、孤独にも何も考えずに幾年と眠っていたとき。
それは唐突に、突然に。
人間の話し掛ける声が聞こえた。
女の高い声だ。
初めは気のせいかと目を閉じた。
宇宙空間に人間が存在する訳がない。
だから目を閉じた。
何も出来ない事からの幻聴だと言い聞かせた、そんな奇妙な出来事が数日前だ。
それまではいつもの通り眠っていた。
何も考えず、眈々と。
そうしたら、どうだ。
また声が聞こえた。
「誰かいませんか?」と、はっきりと。
それは、只の暇潰しと、興味本位から私は応えた。
正直に、退屈であったのだ。

「誰だ。」

『私の、声が聞こえるんですか?』

「聞こえている。
だから応えたのだ。」

姿も見えないその女は信じられないような、嬉しそうな声を出していた。
実に奇妙だ。

「お前は何者だ、と聞いているんだ。」

『あ、すいません。
私は奏って言います。
今はイタリアの病院にいます。』

「イタリア、だと?」

女の名前は奏。
そしてそいつはイタリアにいるのだと言う情報が入る。
私は宇宙の何処にいるかもわからない場所におり、女はイタリア。
あまりにもあり得ない状況に私は怒りを覚えた。
何故そんな事を言い出せ、女は歓喜しているのか。
論理に反している。
どうかしている。

「ふざけるな。」

『すいません・・・。
でも事実なのです。
私は貴方に呼び掛けてしまった。
それに、貴方は応えてくれた。
私はそれが嬉しいのです。』

女、奏は震えた声でそう言った。
恐怖なのかは分からない。
しかし、震えていた。
私は詳しくそれを聞き出そうと口を開こうとした。
しかし、奏に阻まれた。

『すいません、もう、私・・・。
あとで、話し、ま・・・すか・・・ら。』

すいません、と再度聞こえて奏の声は聞こえなくなった。
私は結局なにも知る事は出来なかったのだ。
次、奏と言う女が私に話し掛ける約束を除いて。






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