学校の休み時間。
それは女子男子、大の大人でさえも安心する心の休息だ。
勉強で疲れた生徒は廊下を走り回り、勉学を教えることに疲れた大人は煙草を燻らしに行く時間。
そんな限られた10分間の狭い休みに私は腰掛けていた椅子から立ち上がり、女子トイレへと足を運ぶ。
今朝飲みすぎた水が体外へ押出さそうとしている現象を我慢する程私はバカではない。
人間の自然の摂理に逆らというのは果たしてどんな心理状況なのだろうか。
擁護でもされている訳でもなし。
人に監禁されている訳でもなし。
だから私はそんなアホな我慢という苦行を全て棄て去り用を催しに行った訳なのだが、これはストーカーと言わずになんと言おう。
お手洗いの際にまで現れるこの男達に私はどう反応して良いのか未だにリアクションが湧いてこなかった。

「変態。」

「勘違いをしているようだが、俺にはそんな趣味は一切持ち合わせていない世界だ。」

変な語尾を付けて喋るこの男は冗談もなにも通用しない。
脳筋なのか論理的なことしか言わない為私はこの人がある意味苦手であるが、稀に役に立つ時もある。
例えば私の嫌いな科目である算数であったり、理科であったりの赤ペン先生にはもってこいの人材だ。
丁寧で分かりやすいのが良いのだが、こういう普段の会話をすることが難解な人だと私は思っている。
絡みにくい。
そういう私は会話が弾む人間だということではないのだが。

「なんで女子トイレにまで来るのアンタら。」

「そこに君がいるからだろう。」

「納得いかない。
それじゃあただの監視されているのと同じだわ。」

多分私の顔はムッと、眉間にシワでも寄っているのかもしれない。
しかしその顔を確認する為にはこの男達がいなくならなければならないのだ。
どんなに醜かろうと私は私を見てみたいと願った。

「監視されているのは君だと思うか。
それとも俺達の方なのかもしれないと考えたことはないのか?」

そう問われたが、迷惑をしているのはこちらである。
今も私の髪が天高く上っているのかもしれないというのに、その権限すらも無視したように目の前に現れる男共を私は全力で軽蔑するだろう。
そういう自覚を持って発言していただきたいと常々この男に申し立てたい気持ちでいっぱいなのを彼は知らないだろう。

「だったら私の顔を返してからそう言いなさいよ。」

授業のチャイムが響き始める。
遅れないようにと駆け足でその空間を出て、彼を消した。


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